揉めやすいファミリービジネスの特徴

熊谷さんが相談者に話すポイントに、「スリーサークル・マネジメント」という理論がある。

「事業、家族、株式という、この3つの円が今、どういう状況になっているのかをまず、問います。創業時は大抵、創業者のもとに3つの円が1つにまとまっています。この状態は、非常に揉めにくいんです。しかし、事業に関わっている家族と関わっていない家族、株を持っている家族と持っていない家族など、この3つの円が散らばって、広がれば広がるほど揉めやすい状態になるのです。どうやってそこを、できるだけ一つにまとめるのか。そういうことを話していきます」

さらに親族には、この理論への最低限の理解が必要だと考えるゆえに、まずは一緒に学ぶことを勧めている。感情に流されがちな状況下、拠って立つ基盤になるものとして。

多いのは、兄が社長で、弟が専務というパターン。

「この場合、事業に関わる人数が増えているので、どうしても揉めやすいわけです。そして、感情が優位になりやすい。『兄さんだけ、ずるい』となって、喧嘩別れになるというのは、非常に多いですね」

相続に関しては、弁護士や税理士などの「プロ」もいるが、熊谷さん自身がファミリー企業の経営者であり、2つの真逆の事業承継パターンをその身で経験済みゆえ、他では得難い貴重なコンサルタントとなる。その経験と学びから、一つ一つの家族の実情に沿った、建設的なアドバイスを行うことができるのだ。事業立ち上げ後、相談件数は着実に増えている。

2人の子どもに経営計画書を渡している

熊谷さんには中学生と小学生の子ども2人がいるが、自身の事業承継はどのように考えているのだろう。

「もし本人たちが継ぎたいと言ってくれれば、すごくうれしいとは思いますが、無理やりに、『継げ』という気はないですね。2人には毎年、経営計画書を渡していて、まあ読んでいないと思うのですが、こういう考えでやっているよというのは伝えています。選択権は年上からで、上の子も下の子もやらないって言ったら、第三者を探す形ですね。ただ継ぎたいと言っても、適性が必ずしもあるかどうかはわからないので、ない時はきちんと無理だと判断します。私もそうなのですが、このスペックを維持できなかったら、クビだと決めています。最低限の、退任要件ですね。『自分、ポンコツだな』っていう、ラインです。そうじゃないと、ガバナンスが効かなくなってしまうので」

経営計画書
撮影=プレジデントオンライン編集部
熊谷さんは中学生と小学生の2人の子どもに経営計画書を渡しているが、継いでほしいと話したことはない