配達サービスに行政が疑問を感じたワケ
2020年4月には東京都文京区が、7月には三鷹市が公営のフードデリバリーサービスを開始。自治体が独自にフードデリバリー事業を始めた理由は、街の飲食店を守るという大義名分だけではなかった。仮に街の飲食店を行政が守ろうとするなら、キャッシュレス決済の導入費用を助成するといった施策もある。文京区や三鷹市は、そうした助成金による解決を選ばなかった。
文京区や三鷹市は飲食店の経営を心配するだけではなく、配達員にも着目していた。文京区は地元の社会福祉協議会を通じて配達員を募集・確保し、三鷹市はコロナ禍でアルバイトができなくなって経済的に困窮していた学生を中心にスタッフを揃えた。
これにより、地元の飲食店を地元住民が支え合うという関係が構築されることになる。ここに税金が投入されたことは有効な使い方といえるだろう。
十分とは言えない配達員への対応
フードデリバリーのプラットフォーマー、なかでもUber Eatsの配達員は業務委託契約の個人事業主が多く、速く走ればその分だけ配達件数をこなすことができ、自分の報酬にも反映される。そのため、いかに速く届けるかが至上命題になり、それは道路やガードレールなどを損傷させる事故・トラブルにもつながっていく。2021年には東京都板橋区で配達員が横断歩道を渡っていた高齢者を死亡させる事故も起きた。
猛スピードで駆け抜ける配達員に恐怖を覚えた人は少なくないだろう。自分が注文した料理なら、温かいうちに食べたいから急いでくれる配達員をありがたく感じることもあるだろうが、自分とは無関係な飲食物を運搬する配達員によって怪我をさせられたら、憤りを覚えるのが一般的な感情だ。
配達員に対する怨嗟の声が高まり、それはプラットフォーマーのUberも無視できなくなった。こうしてUber側は対人・対物保険を用意するようになった。同保険は「自宅から待機場所に移動する際に起きた事故」「配達先から待機場所に移動する際に起きた事故」「待機中の事故」などは対象外となっている。

