40歳から始まる脳の老化そのメカニズムと正体
認知症は病気の進行とともに過去の記憶が徐々に失われ、やがて家族すら認識できなくなる恐ろしい病気です。しかし、認知症に至る前の「脳の老化」は、適切なケアをすれば予防できることがわかってきました。
脳の老化は細胞レベルから始まります。加齢とともに細胞内の水分量が減少すると、血液中の栄養を細胞に取り込む力が弱まり、栄養をエネルギーに変換する「TCAサイクル」という代謝経路の効率が悪くなるのです。この代謝機能の低下が始まるのは40代から。40歳時点の脳機能を100とすると、80歳では60程度にまでエネルギー産生量が低下するといわれています。
エネルギー産生量の減少は、脳の代謝全体を滞らせます。日中活動していると脳に老廃物が溜まるのですが、それを処理する効率が悪くなるため、アミロイドβやレビー小体などの異常タンパク質が蓄積していき、やがて認知症を引き起こします。そのため脳の老化を防ぐには、血流をよくして脳にエネルギーが入りやすい状態を保ち、TCAサイクルが円滑に回るようにすることが重要なのです。
加えて、脳内では細胞同士の繋がりを維持するのにも多大なエネルギーが求められます。脳細胞は新しい刺激を受けると瞬時に樹状突起が出て他の細胞と繋がりますが、それを固定するには繰り返しの学習と十分なエネルギーが必要です。この機能が低下すると記憶力や理解力、判断力に動体視力まで低下し、視野狭窄などの症状も現れます。これが「脳の老化」の正体です。
脳の老化が始まると、まず物忘れや置き忘れが増えます。言葉も出てこなくなり、「アレ」「ソレ」といった指示代名詞の使用が増えることも顕著なサインです。さらに、新しいことへの意欲が低下します。チャレンジングな物事に対する興味が薄れ、全体的に鬱傾向が強まります。映画を観ても面白く感じなくなるなど、快楽に対する反応も鈍くなります。
これらの症状は、早い人では30代から現れることもあります。しかし、大規模な認知機能テストの結果によると、認知機能が本格的に低下するのは55歳からで、この年齢を境に記憶力、理解力、判断力が急速に衰えていきます。
自分の状態に「不如意感」(「いつもと何か違う」といった違和感)を覚えたら要注意です。これまで問題なくこなせていた仕事にミスが多くなる、忘れ物をすることが以前に比べて明らかに多い、何事にもやる気が起こらない、40代以降でそんな感覚を覚えたら、脳の専門医の診察を受けるべきです。
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