自らも酒好きで飲酒による肝臓障害や脂肪肝に興味を持つ肝臓専門医・浅部伸一氏は、いかに健康を害しないように飲酒を楽しむかを日々、探求している。酒飲みにとって強い味方に、「最強の飲み方」を聞く。
居酒屋で乾杯する多くの人々の手とマグビール
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Q1.肝臓を傷めずにたっぷり飲む方法はありますか?

A.今の世の中は、お酒を飲む量にあたかも“総量規制”がかかっているかのようですね(苦笑)。適量は人によって違いますし、酒を飲むと誰もが肝臓がんや脂肪肝になるわけではありません。ただ、その個人差を見極めるのは簡単ではなく、ある人の遺伝子を調べても、飲酒の度合いと肝臓の病のリスクとの関係については、参考程度の情報しか得られません。

因果関係が判明している数少ない例の一つがアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(ALDH)です。体内で発生する有害なアセトアルデヒドを無害の物質に分解する酵素群で、アルコール代謝で重要な役割を果たすのですが、そのうちALDH2という特定のタイプのALDHの働きが弱い、もしくは欠けている人――中国南部とアジアの一部、日本に多い――はアセトアルデヒドの分解が遅く、顔が赤くなる(フラッシング反応)。そして顔が赤くなる人は、食道がんのリスクが数倍になることがわかっています。定期的に検査を受けましょう。食道がんは、早期に発見できれば痛みもなく治療できます。肝臓についてもALTがじわじわと上がったり、γ-GTPの値に異常が見えたりしたときは酒量がすぎている可能性があります。