JAはなぜ、信用・共済事業を行っているのか

JA農協は相互扶助を掲げた組合員農家のための組織(※1)だ。

JAグループのHP、「JA(農業協同組合)とは」のなかには、「自然相手の産業である農業では、経営が不安定になることもありますが、信用事業や共済事業があることで、経営を安定させ、さらなる経営発展の手助けをすることもできます」とある。

一般の銀行には厳格に禁じられている金融と他事業の兼業(※2)が、協同組合の中でもJA農協に認められているは、戦後の食糧難時代、消費者への配給のために農協に集荷させたコメを政府が買い上げるとき、金融機能を持つ農協を通じて生産者にコメ代金を支払うことが好都合だったという特殊で歴史的な事情からである。

このような協同組合は欧米にはないうえ金融機能を持つと独占力が強まるとしてGHQは反対したが、食糧難を盾に農林省が押し切った。その後兼業農家のサラリーマン収入や宅地等への農地の売却益などを預金として活用し、JA農協は国内トップレベルのメガバンク(キャッチコピーは「まちのみんなのJAバンク」)に発展した。

また、共済事業も、最初は農産物被害の見舞金程度のことしか農林官僚も考えていなかったものが、生命保険まで含む「ひと・いえ・くるま」の総合保障に拡大し、JA共済は、保有契約高で世界でも指折りの規模だと豪語するまで発展している。

JA共済幕張研修センター
JA共済幕張研修センター(写真=掬茶/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

※1 農業協同組合法 第1条 この法律は、農業者の相互扶助の組織の発達を促進し、もつて農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。
※2 銀行法第12条 銀行は、前二条の規定により営む業務及び担保付社債信託法その他の法律により営む業務のほか、他の業務を営むことができない。

「農業経営の安定」を掲げるJAの矛盾

JA農協は組合員農家の組織である。概算金を決めているのはそのJA農協自身であって卸売業者ではない。JA農協が上げようと思えば上げられる。信用事業や共済事業で莫大な利益を上げているだけでなく、コメ事業自体でも、その販売手数料は23年2600円、24年5700円、25年8700円と上昇し過去にない大きな利益を出している(※3)

【図表】米の各段階の流通価格(R5年産~7年産)
相対取引価格から概算金を引いた差額がJAの販売手数料、運送・保管・検査費などのマージンである(出典=農水省HPより)

農家が肥料等資材価格高騰とコメ価格の暴落リスクで苦しんでいると言われる今こそ、信用事業や共済事業などの利益を活用し、組合員農家のために前年産並みの概算金を払って経営を安定させ、さらなる経営発展の手助けをしてはどうだろうか? JA農協の集荷率も向上する。

なぜそうしないのだろうか?

答えは簡単だ。JA農協にとって信用・共済事業などの利益は「農家を守るための資金」ではなく、「組織と職員を守るための資金」だからである。

※3 農水省HP「米のコスト指標」。米の各段階の流通価格(5年産~7年産)、相対取引価格から概算金を引いた差額がJAの販売手数料、運送・保管・検査費などのマージン。