役員管理職では女性の数字が男性より高い
ここまでは視聴率を高くするための工夫が成功している証左と言えるだろう。
警察・自衛隊・海外などを舞台にすることで硬派な視聴者も振り向かせた。演技上手な有名俳優、人気声優、元力士のYouTuberなどで幅広い視聴者にも注目された。さらに特筆すべきは、コンテンツビジネスにつながりそうな視聴者層を惹きつけている点だ。
まず目につくのが、「役員管理職」が「非管理職」や「無職」の人々より高くなっている点だ。しかも役員管理職では女性が男性より高い。別班とか公安警察など男臭い組織がどんな力学で動くのか、女性管理職に大いに興味を持たせた可能性が高い。しかも別班司令が女性(キムラ緑子)だ。彼女がどうやって、あのゴリゴリの組織内でのしあがったのか、最終的にどんな役割を果たすのか、興味津々なのだろう。
年収の多寡でも、視聴動向が大きく分かれた。「世帯年収1200万円以上」とアンケートで答えた層が、他を圧倒した。スケールの大きさ、各シーンの豪華さも目を引いたのだろう。
出世意欲の有無でも差が出た。「のんびり生きたい」<「出世を考えていない」<「出世したい」ときれいに並んだ。組織や国際情勢の裏側を描いている点が要因と思われる。
月曜に職場で話題に上るから見る?
こうして視聴者層の傾向を振り返ると、TBSの経営方針に沿った壮大なドラマになっているような気がする。同社は2021年にEDGE戦略を発表した。コンテンツIPを起点に企業の成長を加速させる戦略コンセプトだ。デジタル・海外・リアル事業を拡張し、2030年までに放送外の収益を大きく伸長させる方針だ。
同ドラマは、「高所得者」や「役員・管理職」を惹きつけている。普通に考えるとこれらの層は多忙で、タイムシフト視聴することが多いと思われる。ところが同ドラマは彼らを日曜夜9時のリアルタイム視聴に張り付けている。
ドラマの世界観が娯楽として心地よいという点があるだろう。さらに翌月曜に職場で話題に上っている可能性もある。腑に落ちない部分は、タイムシフト視聴で復習しているかもしれない。いずれにしても、娯楽を超えた情報性がこうした層を呼び寄せている可能性がある。
現に同ドラマの見逃し視聴回数はすごいことになっている。第2シリーズ初回については、配信開始から12日間で合計1000万回の大台を突破した。連続ドラマ歴代トップの記録更新だ。これは大量のリピート視聴も示唆している。単なる娯楽目的だけでなく、別の関心で繰り返し見たり、ストーリー展開を“復習”している人がいるのだろう。
ドラマの作りを見ても、こうした状況を視野に入れている可能性がある。「複雑」「目まぐるしい」「テンポが早い」という展開だ。SNS上ではついて行けないという声も確かにある。ところが演出陣は敢えてそう作って、見逃し視聴の再生数を上げたり、有料のSVODで一気見してもらおうとしたりしているのだろう。
ファンを集めたイベントの開催や、その配信にも注力している。グッズ展開にも熱心だ。TBSがめざすリアルタイム視聴に伴うテレビ広告費と、コンテンツビジネスからの放送収入の最大化。その両方を一挙に達成する壮大な実験が展開している。
従来のドラマとはめざす未来が異なる「VIVANT」。TBSドラマグループ別班が挑戦する別格のコンテンツになる可能性がある。






