「最高の金属」だけど人体に有害
さて、では鉛を大気中に放出することは、悪いことなのでしょうか。
ここで鉛という金属について整理しましょう。鉛という金属は、融点が低く高比重です。そのため鋳造が容易で加工しやすいです。また水に溶けないため、水中でも腐食されにくい性質があります。つまりは安く、扱いやすい最高の金属なのです。そのため古代から広く利用されてきました。白粉やペンキ、水道管などに使われていたのです。
しかしこの金属、運悪く人体にとっては有害です。近年、「鉛フリー」と銘打った製品が出ているのはこのためです。
具体的に、鉛のどのような部分が有害なのでしょう。
冒頭で、不安定なウランは放射性崩壊し、安定な鉛になると述べました。また、鉛はその原子の安定性から、ガソリンに混ぜると自己着火を防げます。しかし言ってしまえば、鉛は安定し過ぎることが問題なのです。
なぜなら安定し過ぎている鉛は、何かから鉛になることはあっても、鉛が他の物質になる変化が起こりにくいからです。したがって、鉛はその安定性から、土壌でも大気でも分解されず、一生蓄積していくのです。
人体に極めて有害な金属が、一生分解されずに地球に溜まっていくのです。
体内に留まり、ほぼすべての臓器を蝕む
鉛のもう1つの特徴は、人体への蓄積性です。鉛は物理的・化学的特性がカルシウムと非常に似ているため、人体は体内に入った鉛をカルシウムと誤認し、消化管からカルシウムと一緒に吸収します。人体はカルシウムの代わりに鉛を骨に定着してしまい、長期間にわたって鉛の影響を受けることになります。こうして鉛中毒が起こります。
たくさん鉛を摂取するから鉛中毒が起こるというより、鉛が体外へ排出されにくいため。結果的に体内に鉛が多く蓄積することで、中毒が起こります。
鉛は、人体のほぼすべての臓器に影響を及ぼします。その中でも脳への影響が恐ろしく、神経伝達物質の放出を阻害することで、頭痛や記憶力の低下、運動障害などを引き起こします。鉛は、人類にとって極めて便利な性質を持つ一方で、人類に有害な性質も併せ持ちます。この二面性から、鉛は別名「悪魔の金属」と呼ばれることもあるほどです。
さて、鉛がこれだけ危険な物質であることに、ミジリーやエチル社は気づかなかったのでしょうか。

