45億年でウランと鉛は1:1になる
先ほど、ウランは極めて不安定な原子だと説明しました。そのためウランという原子は、別に中性子をぶつけなくとも、確率的にゆっくりと崩壊していきます。
パンパンに膨らんだ風船から、徐々に空気が抜けていくみたいな感じです。
ウランは長い時間をかけて、原子核内の陽子や中性子を外部に放出し、萎んでいきます。この時に出ていく陽子などは放射線と呼ばれます。そしてウランは最終的に、極めて安定な原子である「鉛」になって落ち着きます。
とはいえ、地球上のすべてのウランは最終的に必ず安定な鉛になれるわけではありません。陽子や中性子が原子核から飛び出す現象はランダムに発生するからです。
たとえばここに、ウランが12個含まれた鉱物があったとします。この鉱物中のウランは45億年経過すると、全体の約半分の6個のウランが鉛になるとされています。残りの6個はウランのままです。
パターソンは、この現象を地球の年齢測定に利用出来ることに気づきました。たとえばある鉱物のウランと鉛の比率を調べ、その比率が半分半分だったとします。すると、この鉱物の年齢は45億歳だと分かるわけです。
「予測以上の鉛」はどこから来たのか?
戦争が終わった後、パターソンは大学に戻りさっそくこの方法を試すべく、まずは手始めに年代の分かっている鉱物のウランと鉛の比率を調べました。すると驚くべきことが分かりました。
この画期的な「ウラン→鉛変換の測定法」で算出した年齢と、鉱物の実際の年齢が全く違ったのです。端的に言えば失敗です。
実験に使用した鉱物には、予測された量以上の鉛が含まれていました。
パターソンはこの余分な鉛がどこから来たのか考え、衝撃の事実に気がつきました。それは、その当時のアメリカの大気が深刻な鉛汚染に侵されており、果ては大量の鉛中毒者を生み出す未来でした。

