うるさいエンジン音を黙らせるには…

時は少し遡って1911年のアメリカ。キャデラックモデル30という大人気の車がありました。しかしこの車、エンジンが異常にうるさいという問題がありました。いわゆるノッキングというものです。確かに映画などで見る昔の車のエンジンって、荒々しくてうるさいイメージがありますよね。

キャデラック・モデル30
キャデラック・モデル30(写真=Greg Gjerdingen/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

現在のエンジンは燃料の発火を管理していますが、当時はエンジン内で燃料が自己着火してしまうことがあり、騒音はこれが原因でした。車はエンジン効率を上げるため、シリンダー内で燃料を圧縮して点火します。しかし圧縮すると分子の運動が激しくなるため、燃料の温度が上昇し、燃料の一部が自己着火してしまいます。

要は、燃料の一部が爆発していたからうるさかったのです。

そのため、当時の化学者たちは自然発火のリスクの低い圧縮に耐えられるだけの燃料を探していました。この圧縮による自己着火のしにくさを「オクタン価」と言います。オクタン価が高ければ高いほど、燃料に適しています。ガソリンスタンドでよく聞くハイオクとは、ハイオクタン価燃料の略です。高級車やスポーツカーがハイオクを燃料にするのは、通常の車よりも高圧縮高出力のエンジンを搭載とうさいしているからです。

3000億円を生む「四エチル鉛」の発見

当時の科学者は、ガソリンに少量の添加物を加えることでオクタン価を高めようとしました。そして1921年、トーマス・ミジリーというエンジニアが5年間かけて、いくつもの添加物を試し、完璧な解決策を見つけました。それは四エチル鉛という添加物でした。

パターソンのマンハッタン計画参加の約20年前のことです。

ミジリーの発見した四エチル鉛は燃料の1000分の1加えるだけで、オクタン価を高められる優れものでした。安価で製造可能であり、この発見による利益は3000億円だとも言われました。

ミジリーはアメリカ最大の車メーカーであるゼネラルモーターズ他3社と協力し、エチル社を設立。1950年代には世界中の何百万人ものドライバーが自動車内のエンジンで鉛を燃やし、大気中に鉛を放出していきました。その鉛の一部は、ラボで地球の年齢測定の研究をしていたパターソンの鉱物に付着し、研究の邪魔をすることになったのです。