生活者の実感と政府発表の「埋まらぬ溝」

企業物価は消費者物価の川上にあたる指標であり、この7%超の伸びは、いずれ食料品や日用品を中心に、川下の消費者物価にも波及していくとみられています。

しかも、いまのコアCPIの低さ自体、電気・ガス代補助金による人為的な押し下げの結果にすぎません。ニッセイ基礎研究所の試算では、こうした特殊要因を除いた実質的な物価上昇率は、2026年4月時点で前年比2.8%と、公表値の1.4%を大きく上回っています。ていうか、全然違うじゃねえか。

政府が誇示する数字と生活者の実感のあいだには、補助金という「化粧」の分だけ溝があるのです。政権が「対策は効いている」と語れば語るほど、実際の物価高が直撃している国民の実感とは異なるという、この溝がかえって不信を深めるという皮肉な循環が生まれています。

そして見過ごせないのが、この物価高の一部が、ほかならぬ高市政権自身の発信によって増幅されているという点です。

市場からの信用が地に落ちた

6月30日に示された「骨太の方針」の原案には、「強い経済」の実現に向けて日本銀行の「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要である」との記述が盛り込まれました。さらに日銀に対して「日銀法第4条及び政府・日銀の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携」するよう求める文言もありました。

市場はこれを、政権が利上げを牽制し、日銀の独立性に介入する動きと受け止め、長期金利は一時2.9%台と約30年ぶりの水準まで急騰、円安がさらに進みました。いわゆる「骨太ショック」です。

政府は7月、日銀の独立性を明記し、「安定的な物価上昇の実現に資する」金融政策運営という表現に修正することで火消しを図りましたが、この間の混乱はすでに輸入物価や円相場に影を落としています。円は1ドル163円台まで下落し、実に39年半ぶりの水準となりました。財務相・片山さつきさんは「必要なら断固たる措置」をとると述べていますが、実際の為替介入には至っていません。

マーケットでは割と公然と片山さつきさんが二枚舌、嘘つき呼ばわりされており、市場関係者からの信頼が地に落ちているあたりは非常に気になります。常識的に考えて、このままいくとお盆前後にあると予想される改造人事で片山さつきさんは交代させられてしまうかもしれません。

記者会見を行う片山さつき財務大臣
記者会見を行う片山さつき財務大臣(写真=財務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons