高市首相の答弁はあまりに他人事

皮肉なことに、階猛さんから同じ質疑の中でこの点を問われた高市さんは、「金融の調整は日銀がやるべきことだ。手段も日銀に委ねられている」と、日銀法第3条を挙げて答えています。6月30日の原案が日銀に求めていたのは、第4条にもとづく政府との「連携」であり、この日の答弁が拠って立つのは第3条の「独立性」です。わずか1カ月のあいだに、政権が日銀に求めるものの軸足が動いています。

非常に残念な事態ですが、この軌道修正自体が、市場と生活者双方に、政権の物価対応への不安を残しているのではないでしょうか。自らの政策方針が長期金利を押し上げ、円安を通じて輸入物価にはね返り、それが支持率を押し下げている一因になっているとすれば、「原因がわからない」という答弁は、いささか他人事に過ぎるように聞こえます。

もちろん、有権者はそのすべてが細かい答弁の内容を見て判断しているとは思いません。ですが、消費税減税といい、給付金といい、公約に掲げていたはずの国民生活に資する施策が一向に進まないことに対して、期待感の剥落で支持率低下となって跳ね返ってきているのは間違いのないところです。

日銀通り
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数字だけ見れば賃金は上がっているが…

賃上げについても、政府はよく「5.26%」という2026年春闘の数字を持ち出します。トヨタ自動車をはじめとする大手製造業では満額回答が相次ぎ、最低賃金も2025年10月に全国加重平均で1121円となり、前年比6.3%という過去最高の上昇率を記録しました。数字だけを見れば、賃金は着実に上がっているように見えます。

しかし連合自身が、価格転嫁の有無によって賃上げ額に1500円ほどの差が生じていると認めているとおり、原材料高を価格に転嫁できる大企業と、それができない中小企業のあいだには大きな溝が残ります。企業間でインフレによって7%を超えるコスト増が生じたとき、その負担は、販売価格への転嫁、企業の利益圧縮、人件費の抑制のいずれかに流れ込みます。

転嫁できる企業は賃上げの原資を確保できますが、転嫁できない企業は自社の利益と人件費でコストを吸収するしかありません。実質賃金が2022年以来マイナス基調を続けているのは、この構造の裏返しです。