結局、その買収は「儲かった」のか
そうなると、この一見“非効率”な買収は、報われたと言えるのだろうか。
結果は数字を見れば明白だ。2026年7月期の上期だけで、グループは売上253億円(前年比+14.5%)、営業利益16億円(同+22.5%)と大幅な増収増益を記録し、中間純利益にいたっては前年比約4割増。通期予想も上方修正した。
ただし、この成長を直接けん引したのは、鳥貴族の既存店の伸びや創業40周年フェア、そして海外出店である。大吉の買収が、即座に利益を生んだわけではない。大倉氏が手にしたのは、もっと長い時間軸の果実だ。ゼロから作れば数十年かかる約500店の店舗網、鳥貴族とは世代が異なる客層、長年焼台の前で腕を磨いた職人たちだ。
「ルーツである大吉と、こうして共創できる未来に来られた。何がそれを可能にしたと思いますか?」最後に、大倉社長に尋ねてみた。
「やっぱり、大吉とは違う市場を目指したことです。大吉は住宅街中心で、店舗数のわりに知名度やブランド力が弱い。逆に、中心地の空中階で勝負した鳥貴族は、そこで強くなれた。だからこそ、いまこうして一緒にやれているのだと思います」
焼鳥を「世界の共通語」に
いま、巨大グループが掲げるビジョンは「Global YAKITORI Family」。すでに海外26店舗を展開する。カジュアルブランドの「鳥貴族」「大吉」から、ミシュラン星付き店と共同開発したプレミアム業態「松明」「mozu」まで幅が広がり、焼鳥という食文化ごと世界へ売り込む戦略が描けるようになった。大吉も、今年4月にベトナムにオープン。同国では、鳥貴族に現地の若者が集い、大吉では日系企業のオフィスワーカーが昭和歌謡を聴きながら郷愁に浸る。見事な棲み分けができている。
「大吉は私のルーツです。大吉がなければ焼鳥屋に進んでいません。大阪に焼鳥の市場を広げてくれたという意味でも、大きな存在だと思います」
40年前、終電後の大吉に通った青年は、「大吉とは違う焼鳥をつくろう。差別化をしよう」と常に意識して、まったく違う焼鳥店を作り上げた。そして今、かつて雲の上に見たその店とともに、世界へ打って出ようとしている。師匠でありライバルは、最良のパートナーになった。


