「仕入れ先は当面の間動かさない」約束のワケ
だからこそ大倉氏は、根幹に手をつけなかった。POSのような仕組みは旗艦店に入れても、人と人の関係には踏み込まない。サントリーとの取り決めで「仕入れ先は当面の間動かさない」と約束し、生業主義をそのまま温存した。
ダイキチシステムの近藤社長も、かつての取材でこう漏らしていた。「そこを一切遮断して、スケールメリットだけで進めるのが、果たしていいのか」。その慎重さは、店主一人ひとりへの誠実さでもあった。
今年でM&Aから3年が過ぎ、備品の共同購買など、スケールメリットを活かす取り組みが徐々に進んでいる。仕入れに関しては、FC店の店主に「鳥貴族の仕入れ先ならこの価格です」と提示して、比べて選んでもらう形をとるそうだ。
「店主さんにも付き合いがありますから、選ばないことも自由なんです。『多少高くても、これまでの仕入先がいい』という店主がいてもいい。こちらは情報をお伝えするだけ。そういう進め方ができればと思います」
スケールメリットは「押しつけない」
スケールメリットは「享受してもらう」もので、「押しつける」ものではない。統合はいまも、デリケートな線引きの上をゆっくりと進んでいる。
この姿勢を受けて大吉の店主からは、「鳥貴族のみなさんに親切にしていただいて」という声も聞こえる。「思っていた以上にみなさんと一緒に気持ちよく働けていますし、働いてくれていると思います」と大倉社長は笑顔を浮かべた。
2024年7月にはオフィスも合併し、運営側の協業も進んでいる。鳥貴族のマーケティングデータを大吉に活用してもらったり、店舗開発のノウハウも共有している。
また、エターナルホスピタリティグループから独立する際には、従来の鳥貴族、コンパクトタイプの鳥貴族、大吉と、大きく3つの暖簾を選べるようになった。これを利用して、今2人が大吉で独立することが決まっているそうだ。さらに、大吉の経理担当部長が、鳥貴族を含めた、国内事業全体の経理を管理する部署へと異動している。財布を預けるのは、十二分な信頼の証だ。
大吉の経営の執行については近藤社長に一任しており、大倉氏は会長ではあるが、取締役会で業績の報告を受けるに留まっているという。

