コメの妥当な価格はいくらくらいか
では、コメの妥当な価格はどのくらいでしょうか。世の中の物価全体が上昇していて、燃料や肥料といった資材価格が上がる中で、コメの価格を以前の水準である店頭価格5kg2000円程度に抑えるのは、農家の経営持続性から考えても難しいでしょう。
ある専門家は、コメ生産のコスト指標となる「全算入生産費」は市場に任せると60kgあたり7000円であり、本来の小売価格は5kg1539円が妥当だと主張しています。しかし、実際の全算入生産費は、令和5年において60kgあたり平均1万5944円であり、50ha以上の大規模経営だけの平均でも1万220円です。
もちろん、消費者から見れば、主食であるコメは安いほど助かりますし、望ましいことだと思います。しかし、「60kgあたり7000円でコメの生産を続ける」というのは生産者から見れば非現実的です。小規模農家が淘汰されて効率化したとしても、大規模農家の全算入生産費から30%以上も下回る価格でコメが売られることになれば、生産し続けることはできません。日本の稲作は崩壊していくでしょう。そうなれば、供給不足によって、コメの価格はむしろ際限なく上昇していくはずです。
今現在のコメの適正価格を出すことは難しいですが、精米歩留まりや流通経費を考慮に入れた上で安定した農業生産を担保するには、玄米60kgあたり2万円前後(店頭売りで5kgあたり2500〜3000円程度)が妥当ではないでしょうか。
大規模化すればコストが下がるか
では、コメ農家の大規模化を進めれば、少しは価格は下がるでしょうか。たしかに農業の効率化においては重要な視点です。ただ、前述した通り、大規模化しても以前に比べて農業資材などのコストがかかるため、大幅にコメの価格を下げることは難しいでしょう。
さらに、日本では国土の約7割が山地・丘陵であり、平坦な農地ばかりではありません。農水省が区画や水路などを整備して生産性の高い農地を作る事業「ほ場整備」の指針においても、平坦地と傾斜地では考え方を分けていて、地域条件に応じた大区画化が前提です。つまり、「農家を一律に全部大規模化すればよい」という単純な話は通用しません。地形・水利・地域合意の制約があるため、全国で同じ形の大規模経営に揃えることは現実的に難しいのです。
また、水田はコメを生産するだけでなく、大雨の際に雨水を一時的に貯留して洪水を軽減する機能、水を地下へ浸透させて水資源を涵養する機能、多様な生物の生息環境となる機能、美しい農村景観を維持する機能など、多面的機能を持っています。もしも小規模な水田が淘汰されれば、食料生産だけでなく、こうした多面的機能も失われてしまうことを忘れてはいけません。

