とにかく増産しまくればいいのか

「減反政策によりコメ不足になってコメの価格が高騰したのだから、とにかく増産すれば値下がりする」という意見もあります。しかし、これは事実とは異なります。

そもそも、減反政策が導入された背景には、食生活の多様化や人口減少などにより、日本人のコメ消費量が長年にわたって減少し続けてきたという事情があります。需要以上のコメを作り続けると大量の余剰米が発生し、価格が暴落して農家の経営が成り立たなくなるおそれがありました。そのため、需要に応じた生産へ誘導する政策として「減反政策」が採用されたのです。

そして、今では「減反政策」は廃止されていて存在しません。主食用米から麦・大豆・飼料用米などへの転換を支援する仕組み「水田活用の直接支払交付金(水活)」はありますが、これは「米を作らせないための制度」ではありません。コメの需要が少ない場合に、農家が水田を他に活用することができるようにするための制度で、いわば需給バランスをとるためのクッションのような役割を果たしています。

現在の農政では、できるだけ水田を維持しながら、需要に応じたコメの生産を行い、食料生産基盤と多面的機能を将来にわたって守ることを目的としています。だから、「とにかくコメを増産すれば解決する」というわけではないのです。

一面に広がる田園
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コメが余ったら輸出すればいい説の問題

では、「コメを大量生産して価格を下げ、余ったら輸出すればいい」という主張については、どう考えたらいいでしょうか。

輸出入米の価格は、為替相場、輸送費、品種、品質、契約条件などによって大きく変動します。また、日本米が海外でどの程度の価格で販売できるかというのは、相手国や市場によって大きく異なるものです。ですから、例えば「カリフォルニア米が5kgで約9000円だから、日本米は5kgが1万1000円で売れる」などと推測することはできません。ちなみに今の日本産米の輸出価格は、白米60kgで約1万5000円程度です。ただ、海外の消費者が毎年継続して日本米を購入してくれるという保証はありません。

世界のコメ市場は、小麦やトウモロコシなどと比べると取引量が限られていて、タイやインド、ベトナム、パキスタン、アメリカなどの輸出大国が激しく競争しています。日本米は品質面で高い評価を受けてはいますが、その需要は主に富裕層や日本食市場に限定されています。品質や食味が優れていても、簡単に輸出量が激増することは考えにくいでしょう。

しかも、世界中で大量消費される長粒種ではないので、一般米とは市場そのものが異なります。おまけに現在の日本米輸出の主力はパックご飯・加工品であり、原料米としての輸出は限定的であることにも留意が必要です。

このような状況下でコメの輸出を拡大するには、生産量を増やすだけではいけません。海外市場の開拓、ブランド戦略、物流網の整備、精米・保管施設の拡充、検疫対応、販売代理店の育成など、多額の投資と長期間の市場形成が必要になります。もちろん、「輸出を拡大すべき」という方向性そのものは否定しませんが、現在の輸出実績をすぐに何十倍にも増やすのは不可能です。