この10年で倍増…再考すべきケースは
今、「墓じまい」が一つのブームになっています。先祖の墓を撤去し、遺骨を別の場所へ移す「改葬」は、事実上の墓じまいにあたる手続きですが、厚生労働省の統計によれば平成26年度に約8万4000件だったものが、令和元年度には約12万件、令和6年度には約17万6000件へと、この10年でおよそ倍に増加しています。
ただ、僧侶として私はこのブームに一抹の危うさを感じています。というのも、墓じまいをする方の中に、本来なら立ち止まって考えたほうがよいのではないか、と思われるケースが少なからず含まれているからです。
当然ながら、正当な理由で墓じまいを行う方もいます。たとえば、墓が山の斜面や交通の不便な辺地にあるため、墓参りに通うのが物理的に難しかったり、ご本人が高齢になってしまい草刈りや掃除などの維持管理を定期的に行うのが難しくなった場合などです。
こういったケースでは、後継者がいても墓を移したいと考えるのは無理からぬことで、私も理解します。
ですが問題は、こうしたはっきりした理由がないのに、墓じまいを行う方が増えていることです。そういう方に理由を尋ねると、多くは「維持費の負担が重い」「子どもに迷惑をかけたくない」と答えます。一見もっともらしいこの2つの理由を、少し丁寧に考えてみましょう。
「維持費が重い」は計算が合わない
まず「維持費の負担が重い」という理由ですが、これはよく考えてみると計算が合いません。
そもそも今あるお墓を維持するコストは、お寺や霊園の管理費と、伽藍の修繕積立金にあたる護持費があり、これらは多く見積もっても年に2万〜3万円かかる程度です。また、七回忌や十三回忌といった法要にもお布施が必要になりますが、こちらはそこまで頻繁ではありません。
その一方で墓じまいには、まとまった費用が一度にかかります。大きく分けて、墓石を撤去して更地に戻す費用が30万〜50万円程度、魂を抜く儀式(撥遣供養)のお布施に3万〜5万円程度が必要です。
そして埋葬方式によって大きく変動しますが、遺骨の新しい移し先でも費用がかかります。現在、墓じまいをした人が移し先として多く選んでいるのが、納骨堂や樹木葬といった永代供養墓です。
永代供養墓は、墓地の管理者が遺族に代わって供養や管理を引き受けてくれるお墓で、複数の遺骨をまとめて納める合祀と個別埋葬の両方があります。
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