持病で脚が不自由になり、現在は千葉の田舎で暮らす中村うさぎさん。買い物、ホスト、整形に依存したかつての生活を抜け、今は何を考えながら暮らしているのか。

削ぎ落とされた先には本質的な欲望だけが残る

「うさぎさんは余命いくばくもないんだから、今のうちに好きなもの食っておいたほうがいいですよ」

友人のドクター高梨に言われた言葉です。「余命いくばくもない」なんて本人に向かって言う人、初めてだよ。しかも医者のくせに。医者って普通、そんなこと言わないじゃん。でも、今では自分でも言ってますよ、「余命いくばくもない身です」って。ウケたからね、そのフレーズに。

中村うさぎ
中村うさぎ(Usagi Nakamura)
1958年、福岡県生まれ。同志社大学卒業。0Lやコピーライターなどを経て小説家デビュー。『女という病』『私という病』『愛という病』『セックス放浪記』『狂人失格』『他者という病』など多数の著書がある。現在は夫と猫とともに千葉の田舎に暮らす。

別に長生きはしたくありません。でも、生きてる間に自分の中の欲望が減っていくことは、つらいですね。たとえば、私は食べることが大好きなんですが、体が受け付けなくなってきてる。好物のうなぎを食べれば、次の日必ずお腹を壊して寝込むわけ。「なんでだろう」と思ったら、別の友人の医者に「うさぎさんの腸が老化して、脂を分解できないから」と言われました。そのうち、揚げ物も、とんかつも、コンビニのコロッケでもお腹が痛くなるようになって。そうするとバターもダメ、フレンチもダメと、どんどん食べられるものが減っていき、欲望が否応なく削ぎ落とされる。

(構成=村松まりこ 撮影=藤中一平)