認知症に薬の効果は期待できない
認知症、特にアルツハイマー病の原因については、長年「アミロイドβ仮説」が主流でした。アミロイドβというタンパク質が脳内に異常に溜まり、神経細胞を傷つけてアルツハイマー病を引き起こすとされていました。
ですが、近年では「炎症説」や他の仮説にも注目が集まっています。その背景には、アミロイドβを標的にした治療の限界が見えたことがあります。アミロイドβ仮説に基づいて、多くの製薬会社がアミロイドβを減らす薬をたくさん臨床試験しましたが、期待された効果は見られていません。
最近、認知症の人には脳内に慢性炎症があることがわかってきました。脳内でミクログリア(脳の免疫細胞)が活性化していて、慢性的な炎症が起きています。この炎症が神経細胞を傷つけ、病気の進行に関与していると考えられています。またアルツハイマー病に関係する遺伝子の中には、免疫や炎症に関わるものが多く含まれていることがわかってきました。これは、「炎症説」の根拠の一つにもなっています。
適切な処方ができる医師が少ない
認知症は現在では多因子疾患としての理解が進んでいます。単一の原因ではなく、アミロイドβ、タウタンパク、炎症、血行障害、代謝異常など、複数の要因が絡み合って発症・進行すると捉えられています。このような原因究明の動きを見ても、現在使われている認知症の薬は大きな効果は期待できません。
今、日本では抗認知症薬として4種類が保険適用となっています。
①アリセプト(ドネペジル塩酸塩)
②レミニール(ガランタミン臭化水素酸塩)
③メマリー(メマンチン塩酸塩)
④イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ(リバスタチグミン)
私はこれらの効用について、全否定はしませんが、基本的におすすめしていません。一時期だけ適量ならば有効なものもあります。ただ現状は、抗認知症薬を必要な人だけに適量処方できる医師はごく少数です。認知症の疑いのある患者を前にすると、自動的に「ドネペジル(アリセプト)だ」という回路になっている医者が多い。反射的に薬を出すだけ。
そんな医者にかかるぐらいだったら、旅行に行ったほうがはるかにいいでしょう。

