「顧客と市場の声」を何よりも優先

「購入するクルマを選ぶのは、あくまでも顧客である」という基本的な考えに基づき、世界の各地で売るクルマはできる限りその地で造るという取り組みである。その典型が、米国市場に投入したカムリだ。

日本側からの支援は受けたものの、開発設計の主体は米国の拠点が担い、外観デザインから開発設計、そして生産までの一連の業務を現地で進めた。こうした取り組みにより、米国においてより多くの顧客が好む外観デザインや走行性能などを備えたクルマに造り込んだという。

この地域化の取り組みに併せて、トヨタ自動車は「群戦略」も採用している。群戦略とは、同じ車種名でありながら、外観デザインや走行性能といった特徴が異なる複数のクルマを開発してラインアップを増やす方法だ。

例えば、カローラにはカローラ(セダン)のほか、「カローラスポーツ」「カローラツーリング」「カローラクロス」「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」「GRカローラ」がある。これらのクルマを、TNGAの思想を踏まえて開発設計した同一のプラットフォームを使って造り分けるのである。

しかも、同じカローラ(セダン)であっても、販売する市場によって全長を微妙に変えるなど、地域ごとにきめの細かい開発設計を行っている。興味深いのは、トヨタ自動車がこうした取り組みに着手したきっかけが、倒産への危機感だったということだ。

「倒産」の見出し
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一度潰れかけたからこその「原点回帰」

「我々はリーマン・ショックおよびリコール問題が発生した時に潰れかけた。その経験から『もっといいクルマ』を造るという原点に戻ることの重要性を学び、これらの(3つの)取り組みを行ってきた」(トヨタ自動車)

危機感をばねに組織体制を変え、知恵を絞って新しいものを生み出す。さらに、それに改善を加えて、世界各地域の顧客に向けてより良いものに仕上げていく。こうした取り組みを10年近く粘り強く続けた結果、現在の好調な販売があると、トヨタ自動車自身は分析しているというわけだ。

トヨタ自動車の好業績を支える特徴の1つに、世界のどの市場でも満遍なく売れているというものがある。これは地政学的リスクや災害リスクに強く、事業継続計画(BCP)対応に優れていることを示す。このことから、同社は経営の安定性や持続可能性が高いという評価を得ている。

実際、トランプ関税に多くの自動車メーカーが苦しむ中、トヨタ自動車はその影響を受けながらも、他社がうらやむほどの営業利益を確保している。なぜトヨタ自動車のクルマは、世界で広く受け入れられているのか。

この疑問について、かつて同社副社長だったディディエ・ルロワ氏が見解を述べている。2020年と少々時間がたっているが、当時は新型コロナウイルス禍で世界の多くの自動車メーカーが販売台数を落とす中、トヨタ自動車は際立った売れ行きを示していた。