保険料減額と引き換えに失うもの

つまり、現役世代の負担軽減との名目で高齢者の負担を増やしたところで、保険料減額が若干期待できるかもしれませんが、その一方で、現実には子世代が医療費を補填し、通院を支え、付き添い、介護の穴埋めをし、それらによって働き方や、健康まで崩しかねないのです。

負担は保険制度という制度内から外に出て、各世帯や家族内での付け替えとなる可能性が高まってしまうとも言えましょう。

それは、とても現役世代が“楽になった”とは言えない状況です。

厚生労働省自身、家族介護の経済的負担感や介護離職の存在は把握しているものの、こうした「高齢者の負担増がどれだけ子世代に転嫁されたか」を直接測る公的な指標の開示は、じっさい弱いままなのです。

現役世代の保険料負担が具体的にいくら減るのか、これも知らされていませんが、こうした数字となって現れにくい個々の「家族内での負担」についても、あまりにも政府からの説明と情報が少ないことを、私は非常に懸念しています。

国会議事堂
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誰がどれだけ負担するのが最適なのか

では、どのような制度設計をすれば良いのでしょうか。少なくとも、維新や財務省が求めてきたような一律の「原則3割」は、これまで述べてきたように制度設計としてあまりに粗雑です。

もし多少でも現役世代の保険料負担を減らすことを政策的に実現するなら、まず本当の応能負担とはなにかを議論しなければなりません。

たとえば、金融所得を含む負担能力の把握、低年金・多疾患・在宅・認知症世帯への配慮、そしてなにより高齢者医療・介護にかんする家族内転嫁を政策評価の対象に含めること、これはきわめて重要です。もちろん公費や保険者の負担率についても、聖域化することなくゼロベースで議論せねばなりません。

現在、自民・維新の協議や財務省の提案のなかで進められている議論は、こうした本筋をすっかり飛ばして、“世代間の公平性”という言葉の「イメージ」だけで語られているように見えます。

「現役世代のために高齢者負担を増やすべき」と聞けば、つい賛成したくなるかもしれません。

けれども、負担がどこへ移るのかまで見なければ、私たちは“軽減”ではなく“付け替え”を支持してしまうことになります。

あとで「こんなはずじゃなかった」と思う日が来ないように、いまこそ世代を超えたすべての人が「自分ごと」として、よくよく考えて判断する必要があるでしょう。

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