全国各地に「鉄道ルーム」が続々登場している。中でもJR西日本グループが展開するホテルは、車内を「完全再現」した客室から、鉄道遺産をアートに昇華した高級ホテルまで多彩だ。どんなこだわりが詰め込まれているのか。鉄道ジャーナリストの東香名子さんが取材した――。

いま「鉄道系ホテル」の部屋がすごい

「ホテルに泊まること自体が旅の目的」。そんな体験価値のシフトが、鉄道系ホテルに広がっている。鉄道会社ならではの資産や知見を活かし、鉄道ファンをターゲットにした宿泊プランが増えているのだ。

たとえば品川プリンスホテルの「運転士体験!西武線運転シミュレータステイ」のように室内で運転体験ができるものから、JRイン函館の「北斗星コレクションルーム」のように引退した寝台特急の実物部品を至る所に設置して世界観に浸れるものまで多種多様だ。プランが登場するたびに「たまらん」とため息をもらす鉄道ファンも多いはずだ。

こうした「鉄道ルーム」のなかでも、ひときわ異彩を放っているのがJR西日本グループの取り組みだ。実際に取材すると、ライトなレジャー層から熱狂的なガチ勢にいたるまで、それぞれのニーズを満たす緻密なセグメント戦略が見えてきた。

「ヴィアイン新大阪正面口」に2026年5月オープンした「500系新幹線ルーム」
画像提供=ヴィアイン新大阪ウエスト
「ヴィアイン新大阪正面口」に2026年5月オープンした「500系新幹線ルーム」

JR西日本の多彩なホテル戦略

JR西日本グループのホテルは、近畿・中国・北陸エリアを中心に、駅直結・駅至近の立地を活かしたネットワークを展開。ホテルブランドにより運営会社も異なる。

たとえば高級路線の「ホテルグランヴィア」「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」「ホテルヴィスキオ」はジェイアール西日本ホテル開発が展開。駅直結の利便性と高い客単価で、インバウンドや富裕層、VIP層を主なターゲットとしている。

宿泊特化型ホテル「ヴィアイン(VIA INN)」はJR西日本ヴィアインが展開。ビジネス客やレジャー客を中心に、手頃な価格帯で利便性と快適性を提供している。

こうしたJR西日本のホテルでは、われわれ鉄道ファンがうなるような、“鉄分”の濃い「鉄道ルーム」が用意されている。今回は代表的な3つの部屋を取材し、3つの指標で筆者が独自に評価。コンセプトやターゲット層を分析した。

・リアル度:実車パーツの有無や再現性、空間のリアリティの濃厚さ
・文化度:歴史の深みや鉄道文化としての洗練さを感じさせるか
・エンタメ度:ファミリー層をはじめ、間口を広く受け入れているか

早速3つの鉄道ルームを見ていこう。