軽減されるのは年間2000円という試算
今回、高齢者医療費負担の見直しとあわせて、「世代間の公平性」の名のもとで見直しの対象として浮上しているものに「外来特例」があります。「外来特例」とは、70歳以上の一般・低所得者について、個人ごとに月額上限を設ける、「外来だけの自己負担の上限」の仕組みのことです。
これも廃止・大幅見直しとなると、該当する人たちにとっては大きな痛手になります。これはいわゆる「安全弁」としての機能を持つものなので、これが外れてしまうと、毎月の通院・検査・処方の負担が、そのまま定率負担に近い形で積み上がりやすくなってしまいます。
つまり、慢性疾患で毎月きちんと通院治療を受けている人ほど、影響を受けることになるのです。
この外来特例の見直し・廃止単独による現役世代の保険料軽減効果については、厚生労働省は一定の試算をしています。それによれば、かりに外来特例をすべて外しても、保険料軽減は年700〜2000円程度ということです。
一方、維新が求めてきたような「原則3割」によってどれだけ保険料が軽減されるかについては、少なくとも公表資料を見る限り、1人あたりで分かる形での明確な数字は示されていません。財務省資料にあるのは主として総額ベースの抑制見込みであって、現役世代が家計簿上で実感できる数字の提示はないのです。
つまり「現役世代の保険料負担軽減のため」の改革と言われてはいますが、その軽減効果については、私たちに十分に見える形では示されていない、というのが現状における「正しい認識」ということになります。
高齢者負担増の方針だけははっきりと示されているのに、現役世代の利益については肝心な数字がはっきりと示されない。現役世代側の“得”については、あいまいにしか知らされていない。これには現役世代の人たちこそ、モヤモヤしてしまうのではないでしょうか。
“時間的・肉体的な負担”まで見えているか
さらに気になるのが、高齢者に課される負担は、本当にその高齢者本人だけが引き受けることになるのか、という点です。
その負担が、形を変えて現役世代にもどってくるリスクは本当にないのでしょうか。
もしあなたの親御さんやご家族が、この「該当する高齢者」だった場合を想像してみてください。とくに大きな病気の既往がなくとも、高血圧や脂質異常症、糖尿病などで近所のかかりつけ医に通院していた高齢のご家族に、もし今回の支払い負担増がのしかかってきた場合です。
医療費の支払い増に困って、あなたに経済的援助を求めてくることもあり得るかもしれません。
金銭的な問題だけとはかぎりません。
受診控えや治療の差し控えなどで、新たな疾患の早期発見や病状の悪化が見過ごされたり、治療の開始が遅くなることで重症化したりした場合、入院や手術など、本来であれば防げた治療が増えることで、療養の世話や介助といった肉体的な援助が増えることも十分にあり得ます。
さらに治療後に退院はできても自宅での介護が必要な状態であった場合、いくら公的サービスを併用しても、すべて任せっきりにはできません。現役世代の家族の援助が必要になる場合は少なくありませんから、時間的・肉体的な負担が「原則3割」前より増える可能性は高いと言えましょう。

