きっかけは「長女の誕生」だった

笠原さんが「みてね」を発想したのは、2013年に長女が誕生したことがきっかけだった。

子どもの写真や動画を自分で驚くほどたくさん撮るようになり、遠方に住む両親とも共有したくなる。はじめは既存のクラウドサービスを利用したが、使いづらくてしかたがなかった。大量の写真や動画を前に、どれをアップロードしようかと考えだすと、どれも捨てがたい。選別作業がだんだん苦痛になり、「もっと便利でいいツールはあっていいはずだ」という思いが募った。

だったら、自分たちで開発して提供すればいい――事業化に結びついた発想だ。

笠原さんの仕事は、企画や戦略立案だけにとどまらない。チラシ配りに加え、リリースから1~2年間は、自らカスタマーサポート(CS)としてユーザーからの問い合わせに対応した。

「当初はエンジニアやデザイナーのほかにスタッフが少なかったので、自分でやるしかありませんでした。でも、ユーザーがどこに不満を持ち、何が足りていないのかをリアルに把握できた。いい経験になったと思います」

チラシ配りから問い合わせ対応まで、笠原氏自ら取り組んだ
撮影=遠藤素子
チラシ配りから問い合わせ対応まで、笠原氏自ら取り組んだ

迷ったときは「内なる声」に向き合う

問い合わせた側は、ミクシィの会長から回答が届いたと知ったら、さぞ驚いただろう。ビジネスの最前線に平然と出られるのは笠原さんの強み。世界に通じるサービスまで押し上げた原動力だといっていい。

「どちらかといえばプレーヤー向きだと自覚したのは、経営をはじめ多くのことを経験した結果です。自分はこっちだとわかれば、その道に進むのは自然なこと。マネジャータイプ、プレーヤータイプはたしかにあるので、どちらも経験すれば自然とわかってくるのではないでしょうか」

他人を輝かせることによろこびを感じるならマネジャー、事業そのものが好きで手を動かしたいならプレーヤー――笠原さんの周りでも、はっきりタイプが分かれるという。経験がないことを嫌うのでなく、あえて苦手なこともやってみる時期が30代には必要だという。

「AI時代には自分自身の“内なる声”が最大の武器になると考えています。AIを使えば、誰でもそこそこのアウトプットができる。だからこそ、なぜ自分なのか、なぜやるのかを突き詰める。夢とか希望とか、やりたいこととか。個性やストーリーが最終的な差別化になる。自分の内なる声を大事に育て、具現化していけばいいと思います」