※本稿は、北野唯我『仕事を好きになる技術』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
「人間関係のストレス」の根源
職場の人間関係に悩み、エネルギーをすり減らしている人の多くは、無意識のうちに一つの大きな過ちを犯しています。
それは、「他人は、自分の思い通りに動くはずだ(あるいは、動くべきだ)」という、根拠のない「過度な期待」を抱いてしまっていることです。
「私がこれだけ丁寧にマニュアルを作って教えたのだから、後輩は次から完璧にこなしてくれるはずだ」
「上司なのだから、部下である私のキャリアをもっと親身になって考えて、適切なフィードバックをくれるべきだ」
「同じ会社の社員なのだから、他部署であっても私たちのプロジェクトに協力的な態度をとるのが当然だ」
こうした期待は、一見するとビジネスパーソンとしての「正論」のように思えます。しかし、現実の生々しいビジネスの現場において、他者があなたの思い描いた「理想の台本」通りに完璧に動いてくれることなど、ほぼ100%あり得ません。
なぜなら、他人はあなたとはまったく違う脳の構造を持ち、違う過去の経験から形成された価値観で生き、違うインセンティブで動いているからです。
相手をOSの違うパソコンだと思う
パソコンやスマートフォンに例えれば、分かりやすいでしょう。あなたは最新のiOS(Apple)で動いているのに、目の前の同僚はAndroidで、上司は古いWindowsで動いているようなものです。
OS(基本ソフト)がまったく違うのですから、あなたが「このアプリ(常識)を開いてくれ」と指示を出しても、相手の画面ではエラーが起きて動かないのは当然です。
それなのに、「なぜ私の言う通りに動かないんだ!」とパソコンのモニターを叩いて怒っている。これが、人間関係でイライラしている状態の正体です。
あなたが相手に抱いた「こうしてくれるはずだ」という期待は、裏を返せば、相手に対して「感情の借金」を勝手に背負わせている状態だと言えます。
そして、相手がその期待通りに動かなかった(借金を返してくれなかった)とき、あなたは猛烈な「怒り」や「失望」という形で、高い利子をつけてその借金を回収しようとします。
厳しい言い方になりますが、あなたの目に映る相手の「弱み」とは、あなたが勝手に抱いた期待が裏切られた場所に過ぎません。
逆に相手の「強み」とは、あなたが「やって当たり前」と期待通りに受け取ってしまっているため、感謝できていない場所のことなのです。

