不安定な生活ではモチベーション上がらず

現在38歳になった安藤さん。すでに生活保護を卒業し、同じ歳の女性とその息子と3人で暮らしている。

「7年間くらいは働かずに生活保護を利用しながら心療内科に通い、ときどき就労移行プログラムを受けたりしていたのですが、ある時、鏡を見たら『体型がやばいな』って……。『運動しないと健康にも悪いし、見栄えもよくないな』と思って、市の体育館で筋トレとランニングを始めたら、モチベーションが上がることに気づきました。再び障害者雇用で働き始めたところ、今一緒に暮らしている女性と知り合い、同居することになりました」

鏡の前でお腹を気にしている男性
写真=iStock.com/Amfer75
※写真はイメージです

ケースワーカーに事情を話し、2021年春、33歳の時に生活保護を卒業した。

「生活保護には救われました。やっぱり、安定した収入があるのとないのとでは精神的な落ち着きが違いますよね。多少、病院にかかる時には他人の目が気になりましたが、定期的にお金が入ってくるだけでもありがたいなと思いました」

31歳からの日記も再生のきっかけ

現在も安藤さんは、他人の目が気になりすぎることを克服できたわけでも、一度に複数のことができるようになったわけでもない。だが、31歳頃から日記をつけ始め、今年3月からその日記をもとにnoteを書くことで、過去を振り返り、自分の得意や不得意を知り、その対策を考えられるようになった。そうした積み重ねが功を奏し、働く時間を長くしていくことができるようになっていった。

こうした自分と向き合うための落ち着いた時間が持てたのも、生活保護で安定した生活が送れたからに他ならない。

これまで本連載で7人の生活保護経験者の事例を紹介してきたが、どの人も生活保護の存在に救われ、一度は詰みかけた人生の「再スタート」が切れた。

安藤さんも、「生活保護」がなければ精神的に安定した生活を送ることができず、安定した生活が送れなければ、「自分を改革しよう」というモチベーションが湧き上がってくることもなかっただろう。

「生活保護」は、利用したことがない人にとっては、自分とは無関係の遠い世界のもののように感じられる。筆者も、一度利用したら2度と戻れないのではないかという恐怖を感じていた。しかし実際に利用し、卒業した人は存在する。自分とは無関係の遠い世界のもののように感じるのは、その実態を捉え切れていないからに他ならない。

賃金は上がらず、物価が異常に高騰する昨今、生活が困窮する人の増加が予想される。

生活保護とはどんなものなのか。どんな人が利用し、どんな生活をして、どんな人が卒業し、再び社会に戻っていくのか。

生活保護の実態を明確にすることで、生活保護に対する批判や恐怖を減らし、救われる人や機会を増やしていきたい。

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