「ありえない」安さを30年続けた会社
【藤吉】それだと何がよくないんでしょうか。
【阿部】これはサイゼリヤに限りませんが、「安いから行く」「安いから買う」というお客さんばかりだと、企業は値上げがしづらくなる。ちょっと値上げしただけで「そんな値段ならいらない」と猛反発されるから。
けれど今、サイゼリヤでパスタとドリンクバーのランチを頼んでも700円(2026年4月現在)なんです。これって僕が学生だったころの喫茶店の値段と同じなんです。僕はチポトレ(メキシカン)とかアイホップ(パンケーキ)とかのアメリカのチェーン系飲食店の客単価を調べたんですが、サイゼリヤの客単価は、それらの半分以下ですよ。
【藤吉】特に今は“失われた30年”を抜け出して、あらゆる物価が上がり始めている局面ですから、なおさら「ありえない」安さですよね。
【阿部】その「ありえない」ことを30年営々と続けてきた会社なんですよ。「消費者においしいものを安く提供する」という理念と、それを続けてきたことは大きな尊敬に値することは間違いない。
そろそろ質に見合った値段にすべき
【藤吉】直近(2026年8月期)の決算では、売上高で前年同期比+14.7%で増収増益ではあります。
【阿部】それは企業努力のなせる業で、本当に尊敬に値します。一方で僕は闇雲に「値段を上げろ」と言っているわけではなくて、質に見合った値段にすべきじゃないかと言いたいんです。上場企業の社会的な使命というのは、企業活動を通じて新しい価値を生むことだと思います。苦しいデフレ下にあっても、これだけ味と質にこだわってきたサイゼリヤであれば、デフレを抜けた今こそ、新たなチャレンジができるはずです。
【藤吉】こうしてお話を伺っていると、阿部さんは未来を予測してユニクロやサイゼリヤに投資したわけじゃないんだな、ということがよくわかります。まずは面白いと思った経営者のもとに足繁く通うから、現場の肌感覚としてソシオエコノミックモデルの変化を感じ取ることができる。さらにそこで大きくベットしたから、その後のスパークスの“コンパウンドグロース”があったのかな、と感じました。
【阿部】それはおっしゃる通りで、僕はよく「マクロはミクロの集積である」という言い方をするんです。つまり、マクロな未来は基本的に予測不可能だけど、ミクロな現場を自分の足で歩き、現地現物を徹底的に調べることで見えてくるものはある。

