防衛費は増税、家計、地域負担に変わる
最後に、この問題は家計に直結する。防衛省の防衛力整備計画は、2023年度から2027年度までの5年間に必要な防衛力整備水準を43兆円程度としている。2025年12月26日に配信されたロイター日本語版記事は、2026年度防衛予算案が初の9兆円台となり、無人機や防衛産業基盤に大きな予算を投じると報じた。
財務省の2026年度税制改正大綱概要は、防衛特別所得税(仮称)の創設を示す。同時に、足元の家計負担増を避けるため復興特別所得税を1%下げ、課税期間を10年延ばす設計も示した。
この設計について、2025年12月17日に首相官邸が公表した高市内閣総理大臣記者会見で、高市首相は防衛財源確保のための所得税見直しに関し、新たな家計の負担にならないよう配慮する旨を述べた。だが復興特別所得税の課税期間が10年延長される以上、家計負担は形を変えて長く続く。「足元はゼロ」とは、請求書の発行を先送りしたにすぎない。
2025年度税制改正大綱は、防衛特別法人税(仮称)とたばこ税の見直しを示した。法人負担は賃金や物価に、所得課税は将来の負担配分に、基地強化は騒音、事故リスク、土地利用、避難計画に跳ね返る。
「米国が来るまで耐える力」が必要
防衛費は抽象的な安全保障論ではなく、教育、医療、介護、子育て、防災との予算配分の問題でもある。国民の暮らしに置き換えれば、請求書は三つある。
第一は税で、恒久財源を誰が負担するか。第二は予算の取り合いで、社会保障や教育をどう守るか。第三は地域負担で、弾薬庫、燃料施設、訓練、港湾利用をどの自治体が受け入れるかである。安全保障を「遠い外交問題」として扱う余地は、急速に小さくなっている。
結論は厳しい。米国は日本を捨てたわけではない。だが、守る相手を以前より厳しく見ている。防衛費を増やし、弾薬を備蓄し、南西諸島を守り、基地を使える状態にし、米軍と指揮統制をつなぎ、国民負担をどう配分するかを決める。そこまでして初めて、日本は米国にとって「守る価値がある同盟国」であり続ける。
台湾有事の本当の危機は、日本が戦争に巻き込まれ、中国から攻撃を受けるかどうかだけではない。日本が、米国が来るまで耐える準備を済ませていないことなのである。


