防衛費の増額は“要求の入り口”にすぎない
数字以上に重要なのは能力である。2026年4月22日に米下院軍事委員会に提出されたジョン・ノウ米インド太平洋安全保障担当次官補の証言は、在日米軍司令部を統合部隊司令部へ強化し、日本の統合作戦司令部と連携させること、南西諸島などで現実的な訓練を広げること、火力を重点分野にすることを挙げた。
2026年3月19日に米ホワイトハウスが発表した日米協力ファクトシートも、タイフォン・ミサイルシステム、先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の生産能力、スタンダード・ミサイル3ブロックIIA(SM-3ブロックIIA)の日本生産拡大、政府データ用クラウドによる情報共有を挙げている。
つまり、防衛費は米軍の要求の入り口にすぎない。彼らの要求の本質は、米国製装備、弾薬備蓄、ミサイル防衛、反撃能力、サイバー・宇宙、情報・監視・偵察、南西諸島防衛、在日米軍と自衛隊の指揮統制、そして港湾・空港・道路を含む兵站といった包括的な軍事協力なのだ。
「徴兵制の復活」は求められていないが…
ただ、米軍が日本に対して包括的な軍事協力を求めているからといって、徴兵制の復活まで望んでいるわけではないことは確認しておきたい。米国が日本に徴兵制復活を明確に要求した一次資料や主要報道は確認できない。
対照的に、2026年4月22日に配信されたロイター記事は、ドイツが現役26万人、予備役20万人という兵力目標を掲げたと報じた。日本に同じ数字が求められているわけではないが、欧州では、防衛負担増の議論が人員基盤にまで及んでいることを示す先例である。
現実の要求は、より地味で重い。人を集め、訓練し、残すことである。2026年1月15日に日本の防衛省が公表した日米防衛相会談概要は、南西地域での共同プレゼンス、高度で現実的な訓練、AMRAAMやパトリオット迎撃ミサイル(PAC-3MSE)の共同生産、艦艇・航空機の共同維持整備、統合防空ミサイル防衛(IAMD)と宇宙領域の協力を確認している。
台湾海峡や尖閣周辺の危機で必要になるのは、情報・監視・偵察(ISR)、反撃能力、サイバー防衛、燃料、弾薬、港湾、滑走路、医療、整備員である。南西諸島を支えるには沖縄だけでなく、九州の港湾・空港・補給拠点も不可欠になる。
継戦能力とは、華々しい新兵器の数ではない。交代要員、予備自衛官、民間輸送、医療、自治体の避難計画、修理に戻れる工場を含む社会全体の持久力である。

