身辺の整理をする時間が必要

萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)
萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)

僕はこれまでたくさんの方を見送ってきましたが、死をちゃんと見つめて、やり残したことがないように生きている人ほど、ほかの病気ではなく「がんでよかった」と言います。がんは残された時間がある程度決まっているので、逆算して身辺を整理したり、会社をたためたりするから、と……。一方で、老後のために今やりたいことをがまんしてお金を貯めていたけれど、定年退職と同時にがんになって、「こんなはずじゃなかった」というような話も多く聞いています。

僕自身のことを言えば、長生きしたいとは思っておらず、逆に、自分にとって80歳まで生きることは一番のリスクだと感じています。今の自分の記憶力から脳の今後を予測すると、80歳までに認知症になる確率が高そうですし、エネルギッシュな人は認知症になると手に負えなくなることも知っているので、僕はかなりマズイ(笑)。なので、健康診断も受けていないし、採血もしていないし、来年「がんの末期です」と言われたら、それもやむなしと思っています。

後悔しないように「今を生きる」

ただ、人間、なかなかそこまで思いきれないですよね。だから僕は、今死んでもいいように生きているつもりです。42歳で「えいやっ」と外科医をやめて在宅緩和ケア医になり、患者さん本人が最期まで好きなように生きられることを支援しているのもそう。昨年は、医者としてはあるまじきことでしょうが、診療所を閉めて110日間の世界旅行に家族と出かけ、出発する前には生前葬も行いました。

年を取れば気力も体力も低下するのも自然なことです。長生きしても、どんどん「できること」が減っていくだけ。今日が一番若いのだから、今日を楽しみたいですよね。いつ死んでもいいように、思い残したこと、やり残したことがないように生きて、周囲の友達や後輩、子供にも、「今だよ。先はないよ」という姿を率先して見せていけたらいいなと思います。

群馬県前橋市の萬田診療所
撮影=プレジデントオンライン編集部
群馬県前橋市の萬田診療所、2026年2月
(取材・構成=浜野雪江)
【関連記事】
「相続でモメる家」と「モメない家」の決定的な違い…税理士が断言「"争族"にならない親子の共通点」
「10個のリンゴを3人で公平に分けるには?」有名な思考クイズをひろゆきが解いたら…答えが斬新すぎた
"ヨボヨボ化"を進めるのはラーメンでもパスタでもない…血管・歯・腎臓を同時に壊す「最悪の麺」の正体
94歳、今も踊り続ける…「日本フラメンコ界の母」が20代の時にナイトクラブで見た忘れられない光景
踊るために「子どもが欲しい」とせがむ夫と離婚した…フラメンコに人生を捧げた「94歳の現役ダンサー」の来歴