理想はピンピンコロリだが…
もう一つ、逝く時は「ピンピンコロリが理想」という声もよく聞きます。僕の周りの高齢の方たちも、「ピンピンコロリ、わぁ~、それいいですね!」などという話をしています。皆さんの思い描くピンピンコロリとは、「身体が不自由になったり、認知症になる前に苦しまずコロッと逝く」ことを指しています。
でも実際のところ、ぱっと見たら亡くなっているというピンピンコロリの確率は1%ぐらいです。ヒクヒクとして息がある場合が10%で、その状態で見つかると、ほぼ確実に救急車に乗せられて、病院に運ばれ、濃厚な延命治療が施されるわけです。ですから、仮にピンピンコロリを望んでも、99%が失敗に終わります。
ただ、ピンピンコロリを望むなら方法がないわけではありません。ひとつ言えるのは、がんだとピンピンコロリが可能です。僕の患者さんで、亡くなる直前まで歩いている人は、みんなピンピンコロリです。亡くなるギリギリまで会話をし、食事をして、歩いてトイレに行っていた患者さんは、亡くなる兆候が見え始めてから半日で亡くなることも少なくありません。がんばる人ほど、がんであればピンピンコロリが可能なんです。
がんになっても冷静な人がいる
病院の医者は患者の余命を腫瘍マーカーの数値で測るけれど、僕は「歩けるかどうか」で見ています。がん細胞というのは2倍、また2倍と増えていくので、腫瘍マーカーの数値はどんどん上がっていきます。入院しているがん治療の患者さんは、抗がん剤をやらないと最後は死んじゃうとか、腫瘍が大きくなると死んじゃうと思っているから、死に向かっていく感じがすごいスピードで加速していくと、恐怖におののいて、最後はもうがんばれなくなってしまうんです。
でも僕の患者さんは、腫瘍マーカーの数値が測定範囲外までいっても、体が弱まる治療をしていないから、がんばれる。むしろ腫瘍マーカーを測定しないから、怖くない。
僕の理論は、「人は、がんが大きくなって死ぬのではなく、身体が弱っていくと死ぬ」です。弱っていって、立ち上がれなくなって、歩けなくなって死んでいく。だから、簡単に言えば、大股で歩けるうちは大丈夫なんです。
僕の患者さんで、ある高齢の女性が、病院に行って採血をしたら、ヘモグロビンの値が3で(通常値は成人女性12~16)、「大変だ大変だ。入院だ! 輸血だ!」と大騒ぎになったけれど、「『萬田先生が大丈夫だと言ってるから、大丈夫です』と言って、歩いて帰ってきました」と楽しそうに報告してくれたこともあります(笑)。

