お客様のワクワク感をお手伝いする
「お客様の中には、私の担当外の車種に買い替えるときまで、私に『よろしく頼む』と電話してこられる方がいました。
それだけ、林という営業ウーマンを信頼してくださったわけです。私もその気持ちに応えたい。いろいろご相談に乗ったうえで、その車種を扱っている販売店を紹介し、お客様に同行したものです。
こういうお客様は、次の買い替えや奥様用のクルマは私から買ってくださる。そういう長い付き合いになりますね」
自動車セールスの現場時代をこうふりかえるのは、林文子さん。今年6月、東京日産自動車販売の社長に就任したばかりだ。
林社長は、お茶汲み&コピー取りのOL時代を経て、31歳で自動車セールスの世界にみずから飛び込んだ。営業所初の女性セールスだった。
1日100件の飛び込み営業を自分に課し、1カ月後には支店トップの販売成績を挙げる。その後に転職した高級外車の販売会社でもトップセールスの座を占め続け、支店長、社長を歴任。2005年にはダイエー再建のために、請われて会長兼CEOに就任したのはよく知られているとおりである。
そのセールスの達人、林社長が語る。「お客様は、クルマをはじめモノを買うという行為を通じて、幸せになりたいのです。単にモノを手にするだけでなく、買うという行為を楽しみ、ハッピーになりたい。お客様自身がそこまで気づいていない場合もあるので、セールスの側に、お客様が満足感やワクワク感を味わうのをお手伝いしたいという姿勢が必要です。
それがないと、単にモノを売買するという平凡な商談で終わってしまいます」
さらに、林社長はこうも言う。
「営業力を身に付けるには何が一番大切か、ですか? それは、どうすれば営業スキルを強化できるかなどと考えることではありません。人との出会いに感謝し、お客様との人間関係を楽しむ、相手の喜ぶ姿を自分の喜びとする……そういう気持ちをベースに持ってくることです」
この“人間関係優先の営業”を実践してきた林社長に、以下、ずばり“客の心をむ営業”のポイントを尋ねた。