「デッドライン」より先に「着手ライン」を聞く
仕事にはすべて「納期」があります。マネジャーのみなさんは、部下が作る報告書や提案書の内容をチェックして仕上げるだけの時間を確保しておく必要があるので、ある程度“サバ”を読んで部下に納期設定している方も多いと思います。
『巧遅拙速』は、私が心掛けている仕事スタイルの一つです。「多少の出来は悪くても、迅速である方が良い」という意味です。
私も若い頃は、納期ギリギリに提出することが多く、上司からよく叱られていました。“仕事ができる社員は相手に時間を与える、仕事ができない社員は自分に時間を与える”。これは私の元上司から教わった心得で、大切にしている言葉です。
お客さまへの提案書など、ある程度仕上げるのに時間がかかるものを、部下が納期ギリギリに出してきて焦ったという経験がある方も多いと思います。部下の経験値が低い、指示が曖昧、作成途中でのチェックを怠った、など様々な要因があるのですが、一番の原因は「着手が遅い」ことです。
部下も様々な自分の仕事を抱えているので、マネジャーから指示された提案書の作成は“プラスα”の仕事のはずです。ついつい着手が後回しになってしまい、夏休みの宿題のように納期ギリギリに着手し、完成物のクオリティが低くなってしまうというパターンです。
締切設定後に上司が部下にする質問
私がやっていることは、デッドラインならぬ“着手ライン”の設定です。部下の納期であるデッドラインを設定することは当然なのですが、いくらデッドラインを意識させても、部下が着手しなければ意味がありません。これを防ぐために「着手ライン」を設定するのです。
例えば、提案書提出のデッドラインを2週間後に設定したとします。それと同時に「いつまでに着手できる?」と部下に聞きます。部下が答えた着手日が遅いと感じたら「それで間に合う?」と聞き返してください。
それを聞いた部下は「そうか、この日に着手していては、提案書が十分に仕上がらないとマネジャーは考えているのか」というメッセージを感じ取り、着手ラインを考え直します。「大丈夫です」と答えた時は、「わかった」と思い切って任せるようにしてください。「大丈夫です」と答えたことで、部下にはデッドラインまでに提案書を仕上げる責任感が芽生えているはずだからです。
人間は、もともと面倒くさがりな生き物で、手間のかかる仕事はついつい後回しにする習性があります。ところが、人間の脳はいったん動き始めたら、その動きを止めるのにもエネルギーを必要とします。

