博多発の豚骨ラーメンはなぜ世界進出できたのか。ラーメンライターの井手隊長さんは「クサウマの博多発祥のローカル食が日本全国、世界中で親しまれるグローバル食となった背景には、博多発祥のラーメンチェーンの存在がある。両者は、『ラーメンの楽しみ方』を提案したと言える」という――。
※本稿は、井手隊長『ラーメンビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
“カフェのような空間”を作り出した一風堂
長いラーメンの歴史において、「豚骨ラーメン」の台頭は避けて通れないテーマである。そして、その全国的な普及とグローバル展開を語るうえで欠かせない存在が、「博多一風堂」と「一蘭」、この二つの博多発祥のラーメンチェーンである。
いずれも単なるラーメン店の枠を超え、ラーメン業界全体に新たな価値観とスタンダードをもたらした。ここでは、両者がどのようにして「豚骨ラーメン最強時代」を築いたのか、その歩みと功績をあらためて見ていきたい。
まず、「博多一風堂」が登場したのは1985年。当時、博多のラーメンといえば、豚骨特有の匂いや、雑多な屋台文化の延長線上にある「男臭い」ラーメンのイメージが根強かった。
「一風堂」はこうした既成概念を打ち破るべく、あえて豚骨臭を抑え、旨味を凝縮したクリーミーで上品なスープを開発。あくまで本格派ながら、誰もが受け入れやすい味に昇華した。
スープの乳化具合やタレのバランス、食感のいい極細麺といった要素もさることながら、特筆すべきはその“場づくり”である。
木製の看板、手染めののれん、木目調の内装、店内に流れるジャズのBGM。これらの演出によって、「一風堂」は従来のラーメン店にはなかった“カフェのような空間”を作り出した。
それまでラーメン店が主に中高年男性の居場所であったのに対し、「一風堂」は若年層や女性客の取り込みに成功。豚骨ラーメンを誰もが日常的に楽しめる食文化へと再定義した功績は大きい。

