豚骨ラーメンを世界に知らしめた火付け役

さらに注目すべきはその海外展開である。2008年、「一風堂」は満を持してニューヨークに出店。異国の地で本格豚骨ラーメンを根づかせるという挑戦は、当時としては前例の少ない取り組みだった。

しかし「一風堂」は現地の嗜好に寄り添いつつ、日本のラーメン文化を海外に広げ、大きな話題と支持を集めた。

この成功によって、日本の他のラーメン店にとっても海外進出が一つの大きな選択肢となり、「ラーメン=国民食」から「ラーメン=グローバル食」へと認識が変化していった。豚骨ラーメンを世界に知らしめた火付け役としての役割は、計り知れない。

一方で、「一蘭」はそのアプローチにおいて、「一風堂」とは異なる独自性を築いたチェーンである。最大の特徴は、徹底した“味集中”のコンセプトだ。

個々の席が仕切られ、スタッフとの接触も最小限に抑えられる「味集中カウンター」によって、来店客は目の前の一杯にだけ集中することができる。

「一蘭」のラーメン
「一蘭」のラーメン(写真=Terabita34/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

一蘭が打ち立てた「没入型ラーメン体験」

視覚情報や他者の存在を極限まで排除したこの仕組みは、まさに「没入型ラーメン体験」とでも呼ぶべき革新であり、一人でも気兼ねなくラーメンを楽しめる環境は、国内外で多くの支持を集めている。コロナ禍で3密を避けたソーシャルディスタンスが叫ばれた時には、「一蘭」の味集中カウンターが再注目された。

「一蘭」もまた豚骨の臭みを抑えたスープ設計を採用しており、濃厚でありながら口あたりは軽やか。初めて豚骨ラーメンを食べる客層にも抵抗感が少なく、広範な需要に応える形となっている。

特筆すべきは、注文時に細かく好みを指定できる「味のオーダーシステム」だ。麺のかたさ、タレの濃さ、ニンニクの量など、細部にわたって個人の嗜好に合わせてカスタマイズできるこの仕組みも大変好評だ。