なぜ醤油ラーメンは数ある味のなかでも一番人気として定着したのか。ラーメンライターの井手隊長さんは「醤油は香り・旨味・色の三拍子が揃い、スープとタレを別々に作るラーメン独自の構造と最も相性がいい。一方、寒冷地では『身体を温める一杯』として日常的に親しまれているが、看板に掲げる店は増えにくく、成功例も限られているラーメンの味がある」という――。

※本稿は、井手隊長『ラーメンビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

ラーメンを食べる人
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醤油ラーメンがいちばん人気な理由

ラーメンの数ある味のバリエーションの中で、常に不動の人気を誇るのが「醤油ラーメン」であることは、業界の誰もが肌で感じている事実だ。

ラーメンがどれだけ多様になろうとも『ミシュランガイド』や『TRYラーメン大賞』などで評価されるのは、依然として醤油ラーメンが多数派だ。

アンケートやレビューサイトの数値だけではなく、ラーメンを日々食し、作り、語り続けているプロたちの実感としても、「結局は醤油に戻る」という声は多い。

特に、この15年ほどの“水鶏系”の台頭に象徴されるように、再びシンプルな醤油の魅力が見直されている。ではなぜ、数ある選択肢の中で、いまなお醤油ラーメンがいちばん人気なのか、その理由を掘り下げてみたい。

まず、前提としてあるのが「醤油」という調味料が日本人のDNAに刻まれているということだ。日本人にとって醤油は、単なる調味料ではなく、味覚の基盤ともいえる存在である。

家庭の味においても外食においても、あらゆる食卓に無意識のうちに登場するのが醤油である。ある業界人は、「日本に来た海外の人は、空港を出た瞬間に“醤油の匂い”がすると言う」と語る。

日本人にとっては日常すぎて感じないが、醤油の香りは日本という国のアイデンティティの一部なのだ。