ラーメン一杯の完成度は何に左右されるか。ラーメンライターの井手隊長さんは「サブでありながら、全体の完成度を底上げする要素となる2つの具材がある。この存在の有無や質の高さが、同じ一杯が『凡庸なラーメン』にも『記憶に残るラーメン』にもなり得る」という――。
※本稿は、井手隊長『ラーメンビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
製麺所と自家製麺、どちらがいいのか
ラーメン店において「麺をどこで作るか」は、単なる仕入れの判断ではなく、店の哲学や方向性そのものに直結する重要なテーマである。
業界ではしばしば「製麺所か、自家製麺か」という二項対立で語られがちだが、実際はその二つの選択肢のあいだには広大なグラデーションが存在する。
ここでは、両者のメリットと課題を整理しながら、近年増えている“レシピ主導型OEM”という第三の選択についても触れたい。
まず製麺所の麺を使う利点は明快である。安定供給、品質管理、労力の削減。この三点は、日常的に多忙を極めるラーメン店にとって大きな支えである。
プロの製麺所は温度・湿度管理や粉の特性に基づく調整を習熟しており、年間を通じて同レベルの品質を維持する術を持つ。さらに、店単体では手が届かぬ領域の仕事までを引き受けている。
一方、自家製麺の最大の利点は、自身のスープに合わせて自由に作れるところにある。さらに、スープの変化への追随が可能なことも大きなメリットだ。スープが日々変化する以上、それに合わせて麺も同じ速度で進化させたい――この欲求は、特にスープの個性を重視する店主にとって避けがたいものである。
製麺所の麺は一定の完成度を持つ一方で、多店舗で使用されることが多く、個店のスープと並走し続けることは難しい。スープが進化しても、麺がそこに追い付かず、おいていかれるという感覚は、一流の職人の多くが経験するものなのだという。

