コメ価格はマーケットでは決まらない

真犯人はJA農協だ。

JA農協は、前年落ち込んだコメの集荷率を上げるために農家にいつもの年の3倍近い概算金(仮払金)を払い、それに自身のマージンを加え、卸売業者に販売している。平成のコメ騒動のときに記録した過去最高の米価2万4000円(玄米60キログラムあたり)より6割高い3万7000円の米価である。(「消費税ゼロ」よりずっと効くのに…政治家が語らず、マスコミが報じない選挙で封印された「物価高の根本原因」を参照)

【図表】コメの相対価格の推移
出典=農水省HP 相対価格は、JAの概算金(農家への仮払金)を元に決まる

「生産=供給が増える」と価格は下がる。しかし、コメ流通のかなりを握るJA農協は、「生産=供給」という図式を変えることができる。生産が増えても在庫を増やせば、市場に供給する量を制限することができるのだ。マーケット(市場)でコメの価格は決まらないのですよ! 鈴木大臣。コメの価格を決めているのはJA農協なのだ。

「概算金」と「政府備蓄米」で在庫調整

もちろん、これにはコストがかかる。どの企業もできれば在庫は持ちたくないし最小限にしたい。金利・保管料がかさむからだ。

これはJA農協でも同じである。かつて米価が低下し売れない在庫を抱え込みそうだと判断したとき、今回とは逆にJA農協は1万3000円だった概算金を一気に7000円に下げて農家に「売るな(売っても損)」という合図(シグナル)を出したときがあった。

しかし、今回はJA農協にとって好都合な状況がある。石破内閣(2024年10月~2025年10月)の時に、当時の江藤拓と小泉進次郎の両農水大臣が100万トンの備蓄米から70万トンほど既に放出している。残り30万トンの備蓄米在庫も家畜のエサ用に処分寸前のものだ。

つまり、農水省が備蓄米の在庫回復と称して少なくとも70万トン最大で100万トンものコメを買い入れれば、JA農協が積み上げた過剰な在庫を一気に消してくれる。コメの全体需給からしても、70万トン生産が増えても農水省が市場から70万トン買い入れれば供給量は変わらない。しかもJA農協の過剰在庫が政府の備蓄米倉庫に移動するだけではない。後述するように備蓄米は通常市場に回らせずエサ用として処分するので、70万トンは市場から完全に隔離される。こうして高い米価をJA農協は維持できる。卸売業者も高く買ったコメを安くスーパーに売ると損をするので、末端の消費者価格も下がらない。