脂肪や筋肉は病気と戦う備蓄エネルギー
さらに、医学の世界には「肥満パラドックス」と呼ばれる事実が存在します。これは、一般的に「太っていると悪化する」と思われている病気でも、実際には太っている人のほうが予後がいいという現象です。
たとえば、足の動脈が硬化して狭くなるASO(閉塞性動脈硬化症)という病気があります。かつては血管への負担を減らすためにやせるよう指導されていました。ところが、10年後の生存率を追跡調査したところ、驚くべき結果が出たのです。
●BMI25以上のちょいデブ層→10年生存率約5割
●やせ型層→10年生存率2割未満
心臓に負担がかかるとされる心不全においても同様です。太っている人のほうが心不全が起こることを回避でき、最もリスクが高かったのはやせ型の人でした。高齢期において、脂肪や筋肉は病気と戦うための備蓄エネルギーであり、生命をつなぎ止めるための重要な防波堤なのです。
日本の医療現場では、高齢者医療の実態をあまり知らない学者や官僚が決めた基準に従って、欧米並みの厳しいメタボ対策が高齢者にも適用されています。
「健康のために」と真面目に食事を減らし、やせてしまった結果、免疫力が落ちてがんになりやすくなったり、体力が落ちて寝たきりになったりしては、まさに本末転倒です。
国の基準や医者の言葉を鵜呑みにして、自分の首を絞める必要はありません。日本人の体質、そしてあなたの年齢に合った「戦略」を選びとってください。
長寿県・沖縄が短命化した本当の理由
「健康のために粗食にしなさい」「太るのは悪」。
こうした指導がいかに危険かを示す事例があります。かつて長寿日本一を誇った沖縄県の平均寿命のデータです。
1980年代まで、沖縄は男女ともに平均寿命が全国トップクラスでした。当時の沖縄の食文化は調理にラード(脂)を使い、豚肉をよく食べ、全国平均より脂肪摂取量が多いのが特徴でした。
ところが、ある時期から「欧米化した食生活は健康によくない」「脂肪を減らして野菜と大豆を食べよう」という健康指導が徹底されました。真面目な県民はそれに従い、脂肪摂取量を減らしていきました。
その結果、どうなったと思いますか? 2000年には男性の平均寿命が全国26位に急落。2020年にはなんと43位(厚生労働省「都道府県別生命表」)にまで転がり落ちてしまったのです(いわゆる「26ショック」)。
「肉と脂」を減らした結果、長寿県の座を失ってしまったという事実は、今の日本のメタボ対策がシニアの方にはいかに的はずれかを雄弁に物語っています。国や学者のいう健康的な食事が、必ずしも長生きを保証するわけではないのです。

