親身な指導をしたはずなのにパワハラ認定される人の特徴は何か。行動経済学の専門家で青森大学客員教授の竹林正樹さんは「長い時間をかけた指導は、指導を受ける側にとっては苦痛である可能性もある。このギャップを防ぐのに、『指導は2分以内』というルールが有効だ」という――。

※本稿は、竹林正樹『行動経済学トレーニング』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

オフィスのデスクで頭を抱えるビジネスマン
写真=iStock.com/mangpor_2004
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丁寧な指導なのに苦痛と言われる理由

生命保険会社の地方支店に勤務するDさん(男性・44歳)は、4月に管理職に昇進しました。Dさんは以前から「管理職になったら、しっかりと時間をかけて部下をじっくり指導しよう」と考えていました。というのも、Dさん自身が上司から丁寧な指導を受けたお陰で成長できたと実感しているからです。

Dさんは着任の挨拶で「皆さんが納得感を持って仕事ができるように、何度でもしっかりと説明します。わからないことがあれば遠慮なく言ってください。風通しのよい職場にしていきます」と発表し、メンバーたちから拍手で迎えられました。

実際、Dさんは時間をかけ、自分が歩んできた道の話も含めて、部下に一から指導しました。その結果、Dさんは残業時間が増えましたが、それでも部下のためを思って頑張り続けました。

管理職業務に少しずつ慣れ始めた夏の日、Dさんは突然、本社の人事部長に呼び出されました。

人事部長は神妙な面持ちで「あなたの職場の多くのスタッフから、指導が苦痛との申し出がありました」とDさんに伝えました。

Dさんは「何かの間違いではないでしょうか? 丁寧に指導し、皆に受け入れられています」と答えましたが、人事部長は「あなたの話が長すぎて、スタッフは毎日残業を強いられ、疲弊しています。来週から長期研修に参加してください」と言いました。

コミュニケーション不足を指摘されるのならともかく、コミュニケーションそのものを否定されるとは……。Dさんは涙がこみ上げてきそうになりました。