人はなぜ悪質業者の存在を知っていても引っかかってしまうのか。行動経済学の専門家で青森大学客員教授の竹林正樹さんは「悪質業者は、被害者の心理特性(認知バイアス)を刺激して誘惑する手法を日夜考え、実践しているため、無防備のままでは到底太刀打ちできない。そこまでわかっている以上、私たちは認知バイアスを踏まえた仕組み作り(ナッジ)で防御していくのがベストだ」という――。
※本稿は、竹林正樹『行動経済学トレーニング』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
スキルアップのつもりが…業者の魔の手に
Cさん(女性・28歳)は九州地方の文具会社の事務職。スキルアップして転職を考えています。
取引業者の人がデジタルクリエイターとして成功しているのを見て、Cさんも目指すことにしました。
SNSでDスクールがよく表示され、その中には「第一線で活躍している修了者多数!」「修了者の満足度97%!」といった文言が並んでいました。フォロワー数が多く、ポジティブなコメントが多いこともあり、好意的な印象を持ちました。
Dスクールの受講料は50万円。でも「他のスクールに比べてこんなに安い」と書かれているのを見て、「分割払いなら払えそう」と考え、申し込むことにしました。
入会して3カ月、講義動画視聴ばかりで、いつまでも実践に移りません。
Cさんは思い切ってスクールの事務局に相談してみました。するとスタッフは「Cさんはこのコースが合っていないかもしれませんね。今なら3割引きでプロフェッショナルコースに入れる枠があります。この特典はCさんだけにしかお知らせしないので、他の人には言わないでくださいね」と言われ、Cさんはプロフェッショナルコースに申し込むことにしました。
その翌月、大学時代の同級生たちとの飲み会で、Dスクールに通っていることを話しました。すると、1人の同級生が気まずそうにCさんにスマホの画面を見せました。
そこには「最近、Dスクールが悪質商法の疑いで利用者とトラブルになっている」と書かれた記事がありました……。

