ついつい引き寄せられてしまう心理
Cさんには、悪質業者に引っかかりやすい人に共通する心理「単純接触バイアス」が見られます。
これは「何度も見ているうちに愛着がわいてくる」という心理で、CさんもSNSで何度も目にした広告を無意識のうちに好意的に受け入れたようです。
企業が多額の費用をかけてでもネット広告を繰り返し表示するのは、ユーザーに単純接触バイアスが働いて、実際に申し込む人がいることを知っているからなのです。
さらに、CさんがDスクールのフォロワー数が多いのを見て信頼してしまったのは、「1つのことが輝いていると、他のことも優れているはず」と拡大解釈したくなる心理「ハロー(後光)バイアス」が働いたからのようです。
ここで注意すべきは、フォロワー数はお金で買える場合もあり、本来「フォロワー数が多いこと」と「スクールが信頼できること」「スキルが身につくこと」は、別ものですが、Cさんは一を聞いて十を知った気になり、「このスクールで間違いない」と信じ込んでしまったのです。
なお、統計学の観点では、修了者の満足度が高くなるのは当然なのです。
具体的数値を当てはめて考えてみます。「1万人がスクールに入学し、最終的に100人が修了し、そのうちスクールが厳選した30人にアンケートを行い、29人が満足と答えた」という状況では、数字上では満足度97%(=29/30)が達成できてしまうのです。
しかし、アンケートを行った30人は入学した1万人全員を代表しているわけではなく、最後まで残った特別な人たちです。
ここで、実際に入学した1万人を分母にすると、満足度0.29%(=29/10,000)にすぎないのですが、スクールではこのような不利なデータは表に出しません。あくまでも自分に都合のよいデータを前面に出し、それに釣られる人を待ち構えています。
「無駄になる」「今だけ」の罠
CさんはDスクールに申し込む前に、「もっと安くて自分に合ったスクールがあるのでは?」と立ち止まって考えるチャンスはありました。
でも、Cさんは認知バイアスを刺激するアプローチを連発されると、直感的な判断をしてしまうのです。自分が手にした情報だけで判断したくなる心理(利用可能性バイアス)や自分の都合のいい情報ばかりが目に入る心理(確証バイアス)が働き、注意深く調べたり、じっくり判断したりする手間を面倒くさがるようになり、Dスクールしか目に入らなくなりました。
CさんはDスクールに通い始めてからも違和感を覚えましたが、「ここでやめると今まで払った受講料が無駄になる」といった心理(サンクコストバイアス)が働き、引き返せなくなりました。
Cさんにとって「限られた時間で高いスキルを習得できるか」が目的のはずだったのに、「今まで払ったコストを無駄にしたくない」という動機のほうが強くなってしまったようです。
さらに、DスクールではCさんがこの状態になったのを見越して「今だけ」「あなただけ」「内緒ですよ」といった特別感を与えるようなメッセージを送りました。
こんな殺し文句を言われたCさんは「限定バイアス」が刺激され、さらに「今、申し込まないと損をする」という心理状態(損失回避バイアス)になり、焦って追加申し込みをしたくなったのです。

