「振られた仕事にノーと言えない」。そんな悩みを抱える人は少なくない。解決策はあるのか。公認心理師の植原亮太さんは「たんに性格や環境の問題と片づけてはいけない。相手に合わせることが“生き方の癖”になっている人がいる。多くの場合、解決のカギは幼少期にある」という――。

職場の困った人間関係

職場の嫌な上司のことを考えなくてもよかったゴールデンウィークは束の間、また再び人間関係で煩わされる毎日がやってきたという人もいるかもしれません。

この時期になるとメディアでは「五月病」についての記事が多くなりますが、これは正式な疾患名ではなく現象面を指した俗称です。しかし、この大型連休を境にして悩みが深まるのは間違いないようです。

筆者は普段、小さなカウンセリングルームを運営しています。ここにいらっしゃる方々の多くは、愛着の問題を抱えている人たちです。それがどういうことなのかを、本稿では職場の上司・部下との関係になぞって考えていきます。

また、本稿でとりあげる事例は、筆者が経験した実際のエピソードを基にしています。ただし、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう、情報の一部を改変している点はご了承ください。

「振られた仕事を断れない」

さて、いきなりですが質問です。

仕事で手いっぱいのときに、上司から振られた仕事をあなたは断ることができますか?

もし「NO」だとすれば、これまでの人間関係に苦労してきたのかもしれません。

「断ることができない」と話すI子さん(29歳・女性)の語りから、愛着の問題と人間関係の苦しみとを見ていきます。

彼女が筆者のカウンセリングルームに訪れたきっかけは、こころの不調に陥ってしまったことでした。

相談中にメモを取る心理学療法士
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

「ゴールデンウィーク中にいろいろと考えてしまって、これはもう自分ではどうしようもできないので、専門家の力を借りようと思って来ました。

ネットサーフィンしていたら、五月病が理由での転職は結構あるみたいです。ただ、私の場合は、転職しても同じだと思う。

いままで上司との関係がつらいと思っていたんですけど、一番嫌なのは、自分の意思をその上司にはっきりと言えないこと。言えば、聞いてくれる人ではあると思う。私が変わらないと、転職しても無意味だと感じたんです」

と、初回に話したのでした。

新しい上司が異動してきてから仕事をこれまで以上に振られるようになったそうです。

それをこなすために定時前の朝7時ごろには出勤し、退勤は23時。時には終電を逃してタクシーで帰宅することもしばしば。

ここのところは帰宅しても疲れ切っていて、食事は摂れずベッドに倒れ込み、翌朝になってやっとの思いで起き上がりシャワーを浴びて出ていくとのことです。毎日睡眠時間は4時間程度で、最近は少し痩せてきたかもしれないとも話します。

さらに、

「定時を過ぎてからのほうが仕事をできるんです。上司の席が目の前なのですが、なんか見られているようで気になってしまって、仕事ができなくて。それに、とてもおしゃべりな人なので週末のゴルフのスコアが良かったとか、近ごろの若者は簡単に仕事辞めるとか、そういうのを聞き続けないといけないので仕事に集中できなくて」

この50代男性上司のことが苦手だと、やんわりとにおわせたのでした。