「パワハラで訴えられている人」の共通点

冗長な指導が不満要因になっていることがわかった以上、指導時間を短くすれば解決できるはずです。しかし、加法バイアス(情報をどんどん加えたくなる心理)が働くと、無意識のうちに指導が長くなってしまうのです。ブレーキをかけるための仕組みが必要です。

ある公的機関で「最もハラスメントで訴えられているタイプの人」を統計解析したところ、「大声で怒鳴る人」「意地悪な発言をする人」「大勢の前で怒る人」を抑えて、第1位は「説教が長い人」でした。具体的には、7分を超えたあたりから訴えられる可能性が高まりました。

指導する側にとっては、長い時間をかけて指導するのは丁寧さの表れのつもりでも、指導を受ける側にとって長時間指導は苦痛そのものだったのです。

これを受け、この機関では「指導は2分以内」というルールを設け、指導の最初に「この指導は2分で終わります」と相手に伝えるようにしました。

指導する大義名分がこちらにあり、相手は黙って自分の話を聞かざるを得ない状況では、準備をしておかないと「相手を動かす力のない冗長な話」を入れたくなります。だから制限時間をルール化しておくことで、縛りをかけることができるのです。

このルールを導入した当初、管理職たちは「たった2分で指導できるわけがない」と不満を漏らしましたが、実際にやってみたところ、ほぼ全員が2分で伝わる話ができました。

実際に1年後、この機関ではパワハラの訴えがほぼなくなったのです。

「2分ルール」で伝わりやすく

この「2分ルール」は、ナッジ(認知バイアスに沿って合理的行動へと促す設計)の視点からパワハラ防止と相手の行動改善の効果が見込めます。

竹林正樹『行動経済学トレーニング』(かんき出版)
竹林正樹『行動経済学トレーニング』(かんき出版)

2分で指導を完結するには、事前に指導内容を書き出し、準備することが必要です。準備を通じ、頭がクールダウンでき、明確に伝えられるようになります(簡素化ナッジ)。

準備をしていると「相手に一発で伝わるようにしたい」という意欲が出てくるものです。

そこで推奨されるフレームワークが「PREP法(Point-Reason-Example-Point)」です。多くの人は話の最初と最後の内容に強い印象を持ちます。PREP法は最初と最後に要点を提示する設計(タイムリーナッジ)のため、メッセージが伝わりやすくなります。

そしてPREPの4つの要素を30秒ずつ時間配分すると30×4=120秒、つまり2分になります。

組織として「指導は2分以内」とルール化するのが理想ですが、それができない場合でも、自分の中でルール化し、指導の冒頭に「2分で終わります」と予告することによって、相手に受け入れ態勢ができます。これならすぐにできます。試してみてはいかがでしょうか。

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