「自動車メーカー」という自己定義からの脱却

最後に、資本市場の視点を変えることも重要である。日本企業自身が「自動車メーカー」という自己定義から脱却し、物理AI基盤企業としてのストーリーを明確に発信しなければ、評価は変わらない。未来の収益構造を説明できる企業にのみ、資本は集中する。

これは「引導」ではない。再配置の機会である。テスラが未来の定義権を取りに来ているのは事実である。しかし定義権は単一企業の専有物ではない。どの層を握るかによって、主導権の取り方は異なる。

テスラがAI企業へと完全に移行するかどうかはまだ確定していない。しかし、AI企業になろうとしている企業であることは疑いようがない。そして評価は、現在の売上ではなく、未来の構造を誰が設計するかで決まる。

日本が取るべき問いは一つである。

「物理AIという新たな基盤の、どの層を握るのか」

静かに、しかし確実に、産業の重心は移動している。いま求められているのは、危機感ではなく具体的な配置転換である。

物理AIのOSを握る者が、次の産業標準を決める。

その標準に日本は従うのか、共に設計するのか。答えは明快である。

OSは自然に決まらない。設計した者が決める。

いま行動するか否かである。

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