日本漁業の活路は何か。鹿児島大学教授の佐野雅昭さんは「産地は今や日本中に拡大し、加熱用まで合わせると年間2万トンを超えるまでに成長している水産物がある。魚類養殖業と日本の沿岸漁業が全体として沈滞するなか、この魚種の養殖は各地で希望の灯となりつつある」という――。

※本稿は、佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)の一部を再編集したものです。

ニジマス
写真=iStock.com/lightasafeather
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「養殖サーモン」はなぜ世界で成功したのか

本稿では、サーモンについて考えます。サーモンは養殖魚として世界で最も成功している魚種で、養殖の将来を考える上で格好の材料です。

日本でもサーモンは大人気で若者世代の人気は絶大、今やマグロやイカを抜いて日本人が最も多く消費する魚種になりました。

しかし、いつから日本人はこんなにサーモン好きになったのか、回転寿司で人気のサーモンとは何かを分かって食べているのか、いささか疑問があります。

「サーモン」は「鮭」の意の英語ですが、現代の食生活で用いられる「サーモン」は少し違う意味で、「生食での消費を前提に養殖生産されたサケ科の魚」全てを指しています。誤解されがちですが、この呼称は食べ方と結びついた商業上のカテゴリーを示す用語で、分類上の特定魚種を指すものではありません。

例えば同じギンザケでも焼き魚用に塩蔵されて切り身で売られるものは「さけ」、刺身用で売られる場合は「サーモン」と呼ぶことがあります。

サケ科であるニジマスも焼き魚用の小型のものはそのまま「ニジマス」、生食を前提として養殖された大型のものは「トラウトサーモン」「サーモントラウト」などと呼ばれ、「サーモン」と呼ぶことに何の違和感もありません。

ネットなどでは「ニジマスだからサーモンではない」、「マスはサケよりも価値がない」といった意見を見かけますが、それも誤りです。

塩鮭としてよく食べられるベニザケは淡水域で育ったものはヒメマスと呼ばれます。サケ、マスという呼び方は魚種分類上の用語ではなく、海にいる大きなものはサケ、川や湖にいる小型のものをマスと呼んでいるだけなのです。

「サケ」より美味しくて価格も高い「マス」もたくさん存在しますから、消費者が呼び方にこだわる必要はありません。

「サーモン」と呼ばれる生食用アイテムは、半世紀前には世界のどこにも存在していませんでした。この「サーモン」の養殖が現在では世界各地で大きく発展しています。

日本でも近年「ご当地サーモン」として注目され、ご存じの方も多いはずです。