輸入価格が急激に上昇している理由

ただし、国産サーモン養殖業にも多くの課題があります。まず種苗の確保です。

種苗を生産する内水面養殖場の立地や規模には制約があり、生産に利用できる水温と水質で供給量が安定している淡水は少なく、特に夏場は渇水する水源がほとんどなのです。

次に、気候変動がもたらす海水温上昇が海での養殖を難しくしています。サーモンはもともと冷水性の魚で、日本では冬期にしか海面での養殖ができません。

それが近年は水温が年々上昇し、養殖できる期間が短くなっています。さらに餌料価格の高騰です。主原料の魚粉は世界中で需要が高まり、輸入価格が急激に上昇しているのです。

漁場拡張時の課題にも触れておきます。今後サーモン養殖業が発展していくためには新たな漁場が北部日本に必要です。

確かに海は広大ですが、冬場に強い風波にさらされる北部日本では、水温が適切だったとしても養殖に適した場所は少ないでしょう。先述の養殖業の成長限界をサーモン養殖も当然抱えているのです。

市場対応にも難があって、そもそも北部日本ですら夏場の水温上昇期には海面でサーモンを飼育することができません。

現在は晩秋の11月頃に種苗を海面に移し、冬期に海面で育成した後、春先の4〜6月頃に全量販売することが求められます。半年の養殖期間ですからサイズは小さいものが多く周年供給もできません。

これでは主な販売先である量販店や回転寿司チェーンから見てかなり問題です。周年供給できないと、一年を通した定番商品化もグランドメニュー化もできないのです。

それでも、今や世界で最も人気のある水産物は「サーモン」と言ってよいでしょう。

世界市場300万トン、日本の存在感は希薄化

世界全体の市場規模は300万トンを超え、このうち日本市場に来るものはわずか6万トン程度、世界全体の2〜3パーセントだと推測されます。

景気低迷の影響もあって、日本は世界市場においてその存在感を希薄化させています。世界市場の最も大きな割合を占めているのはノルウェー産の生鮮アトランティックサーモンです。

生産量を拡大し続けながらも、輸出価格は今なお上昇傾向にあります。それは世界市場が依然として拡大し続けているからです。

日本を含めて先進国、新興国ともにサーモン人気は高く、背景には寿司ブームがあります。世界各国のスーパーでは所狭しとサーモンを使った寿司が並べられています。

サーモンマグロアボカドの寿司
写真=iStock.com/Barish Baur
※写真はイメージです

皮肉なことに、寿司ブームは日本ではなくノルウェーの養殖業界に大きな利益をもたらしているのです。