若者の消費傾向から、食料品に起こる変化は何か。鹿児島大学教授の佐野雅昭さんは「コスパやタイパを重視する若者の価値観の変化が、美味しく豊かな国産水産物ではなく、安価で簡便なタイ産サラダチキンへと向かわせている。食品産業全体がこうしたトレンドを追いかける競争に邁進してしまえば、食料安全保障の問題にまで発展する」という――。
※本稿は、佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)の一部を再編集したものです。
「映え」のために食べる若者たちの消費行動
味より見た目が大事という「映え」志向は若者の間でとくに顕著で、インスタグラムではファッション、コスメ、グルメが人気のジャンルです。
「食」は現代のソーシャルメディアにおける重要なアイテムなのです。自己顕示のための消費は承認欲求を満たすせいか、多くの若者が外食のたびに写真を撮ってウェブ上で発信しています。
そして、彼らの消費行動をビジネスに取り込もうと、外食産業や加工食品産業が見た目にこだわった商品作りを進めています。
その結果、食品市場は見た目がよければ(あるいは特徴的なら)売れる状況になってきた感があります。
中身より見た目重視というルッキズムが食のシーンを侵食し、ここでも重要なのは他者からの評価になります。「食」は他者の評価を得るための手段であり、目的ではないのです。
かつては、「美味しかった」「お腹いっぱい」といった自分の内部から生まれる満足感が「食」においては何より大切でした。「食」そのものが目的だったのです。
しかし今ではその意味が薄れ、「食」は他者に評価されるための手段となり、評価の数こそが自分の価値だと感じる若者が増えています。

