本来の目的とかけ離れた筋トレ

筆者が教えている学生にもサラダチキンを多く購入する者たちがいますが、彼らはみな一律にジムに通い、流行の「筋トレ」を行っています。「筋トレ」もルッキズムのわかりやすい例です。

本来は力の要る動作を行うのに求められる大きな筋肉をつけるためのトレーニングだったはずですが、今ではその目的は見映えの良い筋肉や体形を他人に見てもらい評価されることです。そしてサラダチキンもその手段なのです。

ダイエット効果を謳う食品もそうですが、もはや「食」は何らかの目的達成のための手段となっているのです。

チキンサラダサンドイッチ
写真=iStock.com/LauriPatterson
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そして、「食べる」という行為が楽しく豊かな経験でなくなり、目的実現のために金と時間を費やす手段としての義務的な行動になるなら、コスパやタイパの重視は当然です。

こうした価値観の変化が若者たちを美味しく豊かな国産水産物ではなく、安価で簡便なタイ産サラダチキンへと向かわせているのです。

国産水産物は高級な嗜好品に

若者の魚離れはますます進んでいます。

魚を嫌いになったわけではないのですが、「食」そのものを重視しない価値観、それを煽る商業主義のトレンドに、伝統的な食生活や水産物が合わなくなってきているのです。

水産物市場では今後、グリーンでクリーンで、見映えとタイパとコスパの良い食品が売れ筋になっていくでしょう。若者たちの間では、美味しい水産物を味わい、ゆっくり食を楽しむ機会は大きく減少しています。

水産物の多くは加工原料化しており、企業によって大量に加工されたり、あるいは外食店で調理されたりしたものを食べるのが当たり前なのです。

かつてはサンマ、サバ、マイワシなど沖合漁業で大量に獲れる青魚が安価に大量販売され、家庭で調理され、手軽な惣菜として食べられてきました。

しかし、今ではその多くが缶詰などの加工原料として利用されています。

大規模漁業で獲れるので生産性が高く、現代的なニーズに合わせて加工されるため、コスパとタイパの面でも畜肉加工製品と競争しうると思われます。

しかし、規模が小さく、生産性の低い沿岸漁業で獲れる生鮮水産物の多くは、資源管理体制の下で漁獲が厳しく制限されています。

燃油費などコストは上昇し続けており、付加価値をつけて高価格で販売しなければ漁業が成り立ちません。刺身や寿司など生食用の高級食材として、いわば嗜好品として存在意義を高めるしかないと思います。

しかし、そうした市場はどんどん縮小しつつあり、今では海外観光客のインバウンド需要に依存するような状況です。