流行りを追いかける企業間競争で原料に変化

国産水産物はこのように大量生産される加工品原料と、少量生産される嗜好品の二極化が進むでしょう。前者の市場では安価な輸入水産物も利用されており、市場シェアを拡大しています。

佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)
佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)

ですから、いずれにしても国産水産物の市場は楽観視できません。加えて見落としてはならないのが食品産業の企業間競争です。

彼らはコスパやタイパで勝る加工食品の開発で競い合っており、輸入原料でも国産原料でも構いません。もっと言えば畜肉原料でも構わないのです。

水産会社であったはずのニッスイも今ではサラダチキンの生産企業になりました。食品産業全体がこうしたトレンドを追いかける競争に邁進してしまえば、食料安全保障はどうなってしまうのでしょうか。

本書ではその重要性と、それを実現するための水産業保護の必要性を考えてきました。

しかし、食品加工産業が輸入水産物や畜肉を原料として多用する限り、食料安全保障も国内食料産業の保護も実現できません。食料安全保障はサプライチェーン全体で取り組む必要があります。

どこか一部がそれに反する行動を取れば、全体が上手くいかなくなります。その意味では、やはり消費者の選択が重要です。

加工品一辺倒の食生活になりかねない

サバの缶詰は便利なのでよく売れています。他方、生鮮で売られる国産のサバを塩焼きや味煮に調理して食べることは手間がかかりますが、缶詰とは別次元の美味しさです。

そういう食生活を私たち消費者が取り戻さなければ、輸入原料を多用した加工品一辺倒の食生活になりかねません。

食料安全保障を実現する上で、家庭での食のあり方、調理の楽しさ、伝統的な食文化と地元食材の豊かさを見直していきたいものです。

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