輸入価格3倍近く、円安で「気軽に買えない」サーモン

日本は、2012年にサケ・マス全体で30万トンを輸入していましたが、2023年には約20万トンと大きく減少。同じく626円/キロだった輸入価格は1678円/キロと3倍近くに上昇しました。

円安が価格を押し上げている面もありますが、さすがに高すぎて気軽には買えない状況です。

日本の「サーモン」市場(寿司や刺身など生食で消費される市場)はピーク時で10万トン程度でしたが、輸入サーモンの減少もあって現在は7万トン程度に縮小していると推測されます。

うち輸入品6万トン、国産品は1万トン程度でしょう。

先述の「ご当地サーモン」の生産増加に加えて、これまで生食用で利用されていなかった養殖ギンザケも多くが生食として利用されるようになった結果、国産サーモンの割合は14パーセント程度まで増えました。

最近は輸入サーモンが国産サーモンより値段が高い状況が出現し、国産サーモンに割安感が生じているため、多くのスーパーが国産サーモンを優先的に販売するようになってきました。

サーモン人気が高いなかで今後国産サーモンの割合がさらに上昇していくなら、とても良いことだと思います。

価格競争力を失いつつある国産サーモンの行方

餌料価格すなわち原価の高騰は、国内サーモン養殖業者にとっても厳しい状況です。主たる販路は回転寿司やスーパーで、多くは低価格がウリの業種です。

佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)
佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)

価格転嫁が難しく、仕入れ価格引き上げには抵抗が強いようです。しかし所得増加が進まない経済状況で価格を上げすぎても消費が縮小してしまいます。ライバルはたくさんいます。

TPPやEPAの進展で輸入が自由化されつつある畜肉はまだこれからさらに価格が下がるはずです。これまで利用されていなかったシイラやバサを寿司ネタに加工する企業も出てきました。

安価なアイテムの開発は加速しており、価格訴求を打ち出した売場の維持と顧客のつなぎ止めに懸命です。サーモンは今や最も多く食べられている水産物で、老若男女に好まれる基軸商品です。

しかし、餌料高騰によって価格競争力を失ったサーモンが今後も鮮度や品質を競争力として生き残れるのか、何らかのイノベーションにより低価格が実現できるのか、今後の展開が注目されます。

解決すべき課題は多くありますが、養殖サーモンは大きな魅力がある優秀な水産物です。

輸入サーモンに対して鮮度と安心感、希少性や話題性で勝る国産サーモンが市場に本格的に参入することで、サーモン市場が多様化し、消費者の選択肢が増え、市場が活性化することが期待されます。

沿岸地域だけでなく、種苗を生産する山間部の地域経済にも貢献できるならなおのこと好ましいです。魚類養殖業と日本の沿岸漁業が全体として沈滞するなか、サーモン養殖は各地で希望の灯となりつつあります。

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